私の幼馴染
皇天馬、彼は所謂私の幼馴染である。
幼馴染と言っても、幼い頃から天才的な演技の才能を発揮して、どんどん有名になっていく彼と同じように生活できるはずもない。
幼少期には2人でくっついて遊んでいたし、一丁前に てんてんのお嫁さんになる!だなんて言っていたはずなのに、小学生高学年にもなると大好きだった彼ともあまり関わらなくなっていった。
今では、彼は私のことを覚えているのだろうかと疑問にさえ思ってしまう程だ。
それほど住む世界が違う存在となった彼が、つい最近天鵞絨町の劇団に入団したと母から聞かされた時には本当に驚いた。
思っていたより物理的距離が近いことに内心嬉しく思いつつも、だからといって昔みたいに遊べるわけがないことに気づき一喜一憂する。
こんなにも距離感のある彼に対してそんな風に一喜一憂するのもおかしな話ではあるが、どんなに関わりが薄くても幼馴染の活躍というのは嬉しいものなのだ。それに、家では毎日のように母が録画した彼の映画やドラマを流しており、彼を身近に感じてしまうことは多い。
「名前、天馬くんこの辺りにいるみたいだけど全然見かけたりとかしないの?」
「するわけないじゃん。だいたいあの人がそこら辺うろついてたらすぐ人集りができちゃうんじゃない」
母の発言にため息を吐きたい気持ちになりながらも、学校へ向かう準備を進める。
今日は確か席替えが久しぶりにあるみたいなことを言ってたなぁと頭の片隅で考えながら、くじ運が良くなりますようにと軽く天にお願いをする。
そうこうしている内に学校に付いて、すぐにクラスメイトの友人から声をかけられた。
「ねえ名前!昨日近くで皇天馬見かけちゃってさ!もうほんとーっにかっこよかったの!」
朝イチで、ミーハーな彼女の話を軽く聞き流し自席に着く。ちなみに、私が皇天馬の幼馴染であることはみんなには伏せている。
幼馴染であるからと言って特別仲がいいわけでも、ましてや友人へのサインを貰えるほど親しくはない。
それなのに自分が彼の幼馴染であることをひけらかすのはどう考えても愚策だと思ったからだ。
「おはよ。もうすぐホームルーム始まるよ」
案の定すぐに前の扉から担任が入ってきて、ホームルームが始まった。いつも通りのホームルームの内容と、今日はやはり席替えを行うということが付け足されていた。担任の挨拶で、係の者が前に出てくじを出し始める。席順にくじを引いてる様子を眺めながら自分の番になるのを待つ。
そわそわしながらくじを引いた結果、まあまあ目立ちにくい席になれたことに内心ガッツポーズをする。あそこの席なら授業中に少しくらい居眠りしていても、そこまでは気づかれないだろう。
「名字さん、お隣同士これからよろしくね」
授業態度的にあまり良くないことを考えていると、今回から隣の席になった佐久間くんが明るい笑顔で声をかけてくれたため、それに習って私も笑顔で返事をする。
「こちらこそよろしくね」
するとまたそこに先ほどの友人がきて、佐久間くんを巻き込んで話を振ってきた。
「そういえばさ、佐久間も天鵞絨町の劇団員とかじゃなかったっけ?!皇天馬のことよく見かけたりしない?もし見かけたら私に教えて〜!」
「あはは…天馬くんはやっぱりすごいなぁ」
「ちょっと、佐久間くん困ってるからその辺にしておきなよ。てゆうかいつからそんなに皇天馬にはまったの」
「もう、いつからかなんていいのよ。彼って欧華高校に通ってるって噂も聞いたし、ばったり会えたりしないかなぁ」
友人のはまり具合に若干引きつつも、こうやって身近な人が彼を好きでいてくれるのは幼馴染的には少し嬉しかったりする。
そんな私たちに、佐久間くんから
「今度さ、うちの劇団の公演を観に来ない?」
と観劇のお誘いを受けたのだ。