名付け
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掌に乗せた異能鼠を見ながら、ドスさんはそう言った。
「そう、なんですか?」
「ええ。物理的な干渉も可能ですが、それでも殺傷力はほとんどありません」
ドスさんが指を伸ばすと、鼠が擦り寄る。顎の下を擽るように撫でる。
「貴女が敵意を向けなければ、この子達に危険性はない。どんな猛獣を創り出そうとも、結局は貴女の心次第です」
「うーん……?」
イマイチピンと来ない。理屈は理解出来るけど、あまり大きな動物はまだ出せないから試しようもない。
「貴女はこの世界で、何かを探したかったのでしょうね」
「何かって?」
「さあ。それは貴女にしか分からないでしょう?」
はぐらかされた。そう感じた。初対面であれだけ見抜いてきた人にそれが分からないわけがない。じっと顔を見つめても、ドスさんは静かに微笑んでいる。答えるつもりはないらしい。諦めて、息を吐く。異能鼠が肩に登ってきた。
「無数の目で、熱心に物を探し出そうとする。なるほど、鵜の目鷹の目という訳ですね」
「何ですか、それ」
頭によじ登ろうとする鼠を下ろし、消す。両の掌を合わせて開く。手の内から出てきた兎を膝の上に乗せた。
「何かを探そうとする目付きのことです」
よく出来ました、と控えめな拍手。兎を抱き上げて、首に巻くように肩に乗せる。ずっしりとした重みと温度。肩は凝りそうだけど冬に良さそうだ。
「あまり良い意味では使われない言葉ですが」
「ふーん……」
兎を消すと肩が軽くなる。ドスさんの膝の上に鼠を出した。
「でも、それでいいです」
「そうですか」
鼠と視界を共有して、下からドスさんの顔を見上げようとすると、視界いっぱいに指が映る。
「ではその異能力、鵜の目鷹の目の力、ぼくの為に使って頂けますね」
「勿論」
視界共有を解除して、正面からドスさんを見る。彼はとても穏やかな笑顔で鼠を撫でていた。
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