驚く一味を他所に、バンダー・デッケン達はその恐ろしさを知っているのかアンコロとワダツミに船を引かせて引き返す。それを見たナミもすぐにスルメに指示をするようにルフィに言うが、その前にスルメも走り出していた。
――ドン!!!
物凄い地響きとともに、火山が噴火した。マグマが海底を駆け降りてきている。どんどん水温が上がっていき、その水温差のせいで海流が渦巻き始めた。
「ナミさん、“魚人島”はどっちだ…ブバッ!!!」
「こんな時までやましい気持ちが!!?」
「まだまっすぐ!!! もう少し!!! あの海溝へ!!!」
指針の指す方へナミが声を荒げるが、その先は地面の見えない断崖絶壁だった。けれど、迷っている暇はない。後ろにはもうマグマが迫ってきている。
「飛び込めスルメ〜〜!!!」
ウソップの声を遮ってルフィは楽しそうな声でスルメに言う。それに後押しされ、ドォン!! という音と一緒にスルメは猛スピードのまま突っ込んだ。
「また噴火したァ〜〜〜!!!」
「――アレは何だ!? 上に何か……」
フランキーの言葉に皆が上を見上げると、崖の上から岩が落ちてきていた。
「“土石流”よっ!!! 危ない!! 今の噴火で海溝が崩れたんだ!!!」
ナミが蒼白な顔で岩を見上げる。スルメに避けてと叫ぶが、それが出来るほどスルメも余裕がない。
「シャボンから出て斬って来る!! ルフィ!! しっかり掴んでろよっ!!」
「おう、任せろ」
「だめ!!」
外に出ようとするゾロをシアンが慌てて掴む。離せ、とゾロがもがくが、シアンは必死に止めた。
「バカなの、アホなの!? ここがどこだか分かってる!?」
「シアンの言う通りよ、ゾロ!! ここはもう8千mの深海!! シャボンの外に出ては水圧に潰されてしまう!!!」
「じゃあどうすりゃ――」
「“必殺 緑星”!! “サルガッソ”!!!」
突然ウソップが壁に向かって攻撃する。そこから海藻が生えてきて、岩を止めた。
「わーー!!! 海藻が飛び出した〜!!! スッゲ〜ウソップ!!!」
「一瞬の足止めだ!! 今の内に離れろ、スルメーーー!!!」
その言葉にスルメは慌てて離れる。途端に岩は海藻もろとも巻き込み沈んでいった。
「ウソップやるなーーお前!!!」
「いや〜〜〜!!! すばらシー判断力っ!!!」
「助かったぞ〜〜〜!!」
「――へェ…」
そうして安心した瞬間だった。
「……っ!? ううう、うっ上!」
シアンの咄嗟の言葉も虚しく、上から降ってきた岩がスルメにぶつかり、スルメは気絶してしまう。そのままスルメの力は抜けてしまい、サニー号はなす術なく海底へと沈んでいってしまった。
・
・
――海底 1万m「海淵」(海溝の底)。
パラパラ…と、砂が落ちる音が小さく聞こえる。光の指すそこはどこか神秘的だ。
「…た…助かった…!!」
「……光? なぜこんな深海に…!!」
「眩しいっ!! 目が眩む様です!! 私!! 眩む目ないんですけどね!!! ヨホホホホホ!!!」
「おい、お前ら来てみろ!!」
「上みろよ上〜〜!!!」
「光っててよく見えねェ………」
「(…やっと、来れた……! 戻ってきたよ、フカボシさん!)」
「おいナミ!!! アレか!?」
ブルックのいつものおとぼけを誰もがスルーする中、ルフィがある方向を指差す。
その間、シアンはグッと拳を握りしめてルフィが指差す方を眺めた。
「ええ!! 間違いないわ!! 指針はあの島を指してる!! ――あれが……」
「魚人島〜〜〜っ!!!!」
「でっっけ〜〜〜!!!」
海中の大冒険の中、漸くその全貌を瞳に映すことができた。
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