剣聖のシアン


ザネリ島から離れた赤髪海賊団は、ニュース・クーからの号外を読み、驚かずにはいられなかった。唯一すべてを知っていたシャンクスとベックマンは、海をぼうっと眺める少女に目を移す。

「…………」

シアンはただ、青い海原を見つめていた。
――ザネリ島が、海軍大将サカズキによって消滅した。そして、海賊王の船員であったスコッパー・ギャバンを捕らえ、公開処刑を決行する。
それが、号外に記されたものだった。

「……お頭、行くのか?」
「……いや…」

わざわざ海軍がいるとわかっている場所に赴くほど、シャンクスもバカではない。――だが。

「…………、……」

生気を失った少女を、そのままにはしておけない。キツく叱咤して無理やり生気を取り戻すことも可能だが、それは最後の手段にしたい。

「――行くか」

その一言で、船員はワッと声を上げて楽しそうに頬を緩める。腐っても海賊、楽しいことは大好きなのだ。

「行く、って……」
「ギャバンのところだ」

奪還はかなわないだろう。ゴールド・ロジャーのときのように、ただ見ていることしかできないかもしれない。
だが、それでも、たとえ残酷な光景を見せてしまうことになったとしても。――復讐を、誓ったとしても。

「……うん」

この子が、生きる力を取り戻してくれればいい。
シャンクスはギュッと拳を強く握りしめ、風に靡くシアンの髪をずっと眺めた。





――処刑日当日。
ザネリ島から少し離れた島で、処刑の準備が淡々と行われていた。鉄塔で組まれた処刑台に、並ぶようにして立つ二人の衛兵。眼下には島の住民や新聞記者達が所狭しと押し寄せていた。

「本当にあの“スコッパー・ギャバン”を捕らえたのか!?」
「〈ロジャー海賊団〉の生き残り…!!」

ざわざわと騒つく声を聞きながら、ひっそりとその集団は端の方で息を潜めていた。――〈赤髪海賊団〉だ。特徴的な赤髪を隠すためにフードをかぶったシャンクスは、その腕にシアンを抱く。
抱かれている彼女は、聞こえてくる声を遮断するようにぎゅっとシャンクスの胸元を小さな手で掴んだ。
身体の震えは止まらない。むしろ増してゆくばかりだ。これはさすがに無視できないと、シャンクスは優しく声をかける。

「……引き返すか?」
「…………」

その台詞に、シアンは間髪入れずに首を横に振った。もうすぐ、あの台の上にギャバンがやって来る。そう思うだけでシアンはここにいられた。

「おい! 出てきたぞ!!」

ワッ! と場が湧き上がる。つられてシアンもシャンクスの胸元から顔を上げて、処刑台を見つめた。そんな彼女の様子を見ていたシャンクスも、ソッと同じ方向に目を向ける。

タン、タン、タン。
足音が広場に響く。集う者達は、静かに唾を飲み込んだ。
――タン。
最後の一歩が、終わった。
彼は広場に集まった人々に顔が見えるように、うつ向けていた頭を上げた。瞬間、シャンクスは息を飲んだ。それはあまりにも酷い有り様――だからではない。あまりにも強い眼差しだったからだ。髪はボサボサ、服は薄汚れている。だが、瞳だけは変わらず眩しい光を放っていた。
――ポタッ…
不意に、シャンクスの手の甲に何かが落ちた。見れば雫が落ち、濡れた跡筋があった。――シアンの涙だった。

「ぎゃ、ば……」

ぽた、ぽた。大粒の涙が次々とシアンの頬を濡らし、シャンクスの手に落ちる。彼女の手はギャバンを求めるように、あの別れの日のように伸ばされた。

「ギャバン……!!」

シアンが彼の名を呼んだときだった。処刑台に上がってきたのは、海軍大将赤犬、もといサカズキ。ザネリ島を焼け野原にし、ギャバンを捕えた張本人だ。

「言い遺す言葉はあるか、海賊“スコッパー・ギャバン”」
「……言い遺す、なァ…」

クッと喉奥で笑い、ギャバンは「ねェよ、ンなもん」と呟いた。かつて己の船長が言い遺した台詞のせいで、今や世界は大海賊時代となった。そのようなこと、自分にできるわけもなければしようとも思わない。
「ほォか……なら――」
「いかないで、ギャバン…!!」
!!

微かな、けれど確かに聞こえた声は、今までずっと聞いてきたものだった。まさかここに来ているのか、とギャバンは視線を巡らせる。
どこだ、どこだ。一心に探し――見つけた。特徴的な赤髪を隠したシャンクスに抱かれた、大切な子を。

「――…バカヤロウッ……!」

それまで飄々としていた表情を一変させ、くしゃりと顔を歪ませたギャバンに、サカズキは目を細めた。

「なんじゃァ…気になるモンでもあったか」
「……いや、…ねェな…」

悟られてはいけない。今ここでシアンの存在を知られれば、あいつはこの先追われなければならなくなる。シャンクスの下にいる限り追われる運命からは逃れられないが、それも〈赤髪海賊団〉としてであって、“ロイナール夫妻の娘”だから追われるのではない。
その事実は、隠されるべきなのだから。

「あァ、サカズキ」
「なんじゃァ」
「言い遺すこと……やっぱあったわ」

グッと涙を飲んで、ギャバンは真っ直ぐにシアンを見た。バカみたいに泣きじゃくり、必死にこちらに手を伸ばしてくる娘に、最期の言葉を。

おれは! 幸せだった!

お前がいたから、幸せだった。
お前がおれの娘になってくれたから、幸せだった。
お前がおれを慕ってくれたから、幸せだった。
お前が笑っていたから、幸せだった。
お前が――シアンが、シアンのおかげで、おれは幸せを感じられた

いつものように不敵に笑ったギャバンは、それっきり口を閉ざす。そして、正義の鉄槌は下る。

ギャバン!!

愛しい子の声が、鼓膜を揺らす。

「わたしもっ……! わたしもしあわせだったよ…っ!」

――あァ、その言葉が聞けただけで、十分。
ギャバンか柔らかく微笑んだ瞬間、刃は寸分の躊躇いもなく彼の首に振り下ろされた。





あれから、シアンは変わった。生気を灯した瞳をシャンクスに向け、木刀を振りかざす。しかしシャンクスはその攻撃を簡単に躱し、シアンの死角に入り込んで首筋に打ちかざした。寸でのところでピタッと止まった木刀に、シアンは肩で息をしながらも冷や汗を流す。

「はい、終了!」
「はぁっ…っ、も、もういっかい!」
「い、いや、今日はもう終わり、」
「……お、おねがいっ…!」

可愛らしく上目づかいできゅるんと『おねがい』なんてされれば、溺愛中のシャンクスには効果覿面。うっかり頷きそうになったとき、横で傍観していたベックマンの助け舟がやっと出た。
スコッパー・ギャバンが処刑されてから、シアンは剣に、銃にのめり込んだ。いつか、養父を殺した海軍大将赤犬を殺すために。

――結果的にシアンに生気を取り戻させたのは、復讐心だった。それはシャンクスやベックマンにとっては止めなければならないことだったが、この子からそれを奪ってしまえば、この子はもう立てなくなる。そう思った二人はシアンに芽生えた復讐を止めるでもなく、ただ求められるままに刀と銃の扱い方を教えた。――かつて、彼女の父親と母親が使っていた武器を。

「むぅ……じゃあベック!」
「だめだ、今日は終いだ、シアン。身体を休めることも大事だぞ」
「……はーい」

結局その日はそれで終わり、幼いシアンは浪費した身体を休めるために食事をし、就寝したのだった。

「……寝たか?」
「寝たな」
「……ハァ〜〜……、とうとう明日かァ…」
「お頭が頼んだんだろうが」
「そォだけどよォ……」

すっかりシアンを娘のように思っているシャンクスは、酒を飲みながら明日のことを憂いた。きっとすんなりとはいかない、と自分の友を思い浮かべ、また深いため息を吐く。

「よくあの野郎が頷いてくれたな」
「………」
「……お頭、まさか…」
「いや! ちょこーっと、ちょこーっと盛っただけだ! 『将来はお前を超える大剣豪になる奴だ』って!」
「…………」
「なんか言ってくれよベック!!」

はたして、“あの野郎”とは一体誰のことなのか。すべては翌日に分かることである。
身の危険が迫っていることなど知る由もないシアンは、ぬくぬくのベッドでぐっすりと眠っていたのだった。
――翌日、シアンは目の前にある盛りだくさんのご飯を見て、嫌そうに顔を歪めた。

「……なに、これ…」
「今日はそれを全部食えよ、シアン!!」
「え」

料理長コックはさらに一皿追加して、シアンに残酷な一言を告げた。もともと少食傾向のシアンにしてみれば、それは死刑宣告にも近しいことで。顔色を青くして料理長を見上げた。

「それ食って、今日を乗り切れ……いや、今日から頑張れよ!!」
「いってることがよくわかんない……」
「とにかくさっさと食え!」
「むりだってば!」

意味のわからない労いをされ、さらにはスプーンを口に突っ込まれる。そうまでして食べさせられることに疑問を覚えたが、シアンは渋々大量の朝ごはんを食べることにした。
なんとか食べ終えた(少し残してしまった)シアンは、シャンクスの部屋に呼ばれて彼と対面する。普段はバカみたいに笑っているくせに、今日は少し怖い顔をしているシャンクスにシアンも知らず知らずのうちに緊張して、肩を強張らせた。
やがて重苦しい雰囲気の中、彼が取り出したのは一振りの刀。鞘には綺麗な花模様が彫られ、光に照らされるとまるで浮き上がるかのように薄桃色の箔が刀を包んだ。
そんな幻想的な刀に、シアンは目を奪われた。自然と手が伸び、気づいたら自分の手の中に刀が収まっていた。

「こ、れ……」
「お前の刀だ。名を“桜桃”」
「わたしの……?」

思わずシャンクスを見るが、彼の目は嘘を言っているようには見えない。どうやら本当に自分の物のようだ。
だが、まだ木刀でさえ満足に扱えていないのに、どうしてもう刀を渡してくるのか。シアンは不思議に思いながらも、それを問うことはせずに予期していなかった自分の刀にゆるゆると頬が緩んだ。何せまだ四歳。突然のプレゼントに嬉しくないわけないのだ。

しかし、与えたシャンクスは苦い顔を隠さずにいた。その刀を渡した意味や、これからのシアンに待ち受ける試練を考えると、とてもじゃないが笑顔など浮かべられない。
無邪気に喜ぶシアンと、やっぱりあいつに頼むのは止めようかと焦るシャンクス。そんな二人のいる部屋の扉がノックされた。入ってきたのは副船長のベックマンだ。

「来たぞ」
「もう来たのかァ!?」
「? きたって…だれが?」

一人わかっていないシアンは、あんぐりと口を開けて頭を抱えるシャンクスを見上げ、こてり、と首をかしげる。
そんな幼子の腕に抱えられた刀を見たベックマンは、腹を括った己の船長の肩をポンと叩いた。まるで「諦めろ」とでも言いたげだ。

「……行くか…」

まだ傷一つないシアンを抱き上げ、そのふくふくな頬を指でつつく。されるがままになっているシアンは「んぬ、なに…」と言いながらシャンクスの進む方へと顔を向けた。

甲板に出ると、〈赤髪海賊団〉の船員達が集まっていた。その輪の中心には、シアンが今まで見たことのない男が立っており、ますます彼女は頭にハテナを浮かべる。
船長が現れたことに、船員達は道を作るように掃けた。その間をシアンを抱えて堂々と進むシャンクスは、やがてその男の前でピタリと足を止めた。

「よォ! 久しぶりだな、ミホーク!」
「お前も変わらないな、赤髪よ」

背中に黒刀を背負ったその男こそ、シャンクスが呼んだ人物――七武海が一人、ジュラキュール・ミホークだ。大剣豪とその名を知らしめる彼は、シャンクスと会話を交わしたあと、彼の腕に抱かれている小さな少女に目をやった。

「なんだ、それは」
「かーわいいだろォ!? シアンちゃんってんだ!」
「シアン……」

聞いたことのない名前に、ミホークはシアンの名前を呟いた。呼ばれた本人は、強面のミホークを見て完全に萎縮してしまっているため、返事すらできなかった。

「で、まさかこいつとは言わないだろうな」
「ん?」
「……赤髪」
「なんだよ、将来有望だぞ!? おれが見込んだ女だ!!」

力説するシャンクスの言葉に、ミホークは顔をずいっとシアンに近づけた。途端に目と鼻の先にある強面顔にシアンは泣きそうに顔を歪めた。それを見たミホークは、話にならないと目を閉じて離れる。

「帰る」
「待て待て待て!」

シャンクスはシアンをその場に降ろし、背を向けたミホークを追いかける。船員達の輪の中にぽつんと取り残されたシアンは、いつの間にか床に落としていた刀――桜桃ゆすらうめを抱え、ガシャガシャと刀の音を鳴らしながら二人を追いかけた。

ミホークが誰なのか、シアンは知らない。何をしていて、どんな人なのかも想像すらつかない。だが、この短い間でシャンクスのことはよく知っているつもりだ。彼は自分に対して、意味のないことなんてしない。この刀を渡してきたのも、ミホークと自分を合わせたのも、すべては何か意味のあることなのだ。

「まって!!」

手すりのそばで言い合いをしていた二人に、シアンは大きな声で話しかけた。まさかシアンが来るとは思ってなかったシャンクスは目を丸くし、ミホークは興味なさげに目を閉じた。

「あの、そのっ…」

話しかけたは良いが、何を話したら良いのかは分からない。必死に言葉を探すシアンに、シャンクスが助けるように口を開いた。

「シアン、紹介してなかったな! こいつはジュラキュール・ミホークっつって、世界一の大剣豪だ!!」
「だい、けんごう……?」
「この海で、世界で一番の剣士ってことだ!」

シアンにもわかるように噛み砕いて説明するシャンクス。少し時間を置いて、その意味を飲み込んだシアンはパァァッと目を輝かせた。
世界一の剣士、ということは、シャンクスがこの人に自分を合わせた理由は彼から稽古を受けろということ。すぐにその考えに行き着いたシアンは、少し空いていた距離を拙い足取りで詰めた。

「あ、の!」
「………」
「わ、わたしは、ロイナール・D・シアンっていいます!」
「……ロイナール…?」

思わぬファミリーネームに、鉄仮面のミホークの表情も少し崩れる。それに気づかない#シアンは、桜桃をぎゅっと胸に抱いて、頭を下げた。

「わたしに、剣をおしえてください!」

こうなるように仕向けていたのか、とミホークはシャンクスに目をやる。すると歯をむき出しにした笑顔を返され、彼はもうシャンクスを見ることをやめてこちらに頭を下げる少女を上から見下ろした。

「お前は、何故刀を取る」

問いかけられたそれにシアンは一瞬言葉の意味がわからずきょとんとしたが、すぐに答えを探すように「えっと、えっと…」と目を泳がせる。突然そのようなことを聞かれても、初対面の相手にすぐに答えられるわけもなく、シアンはただただ目線を下へ向けた。
――そんな彼女の腹に、容赦なく蹴りが入った。強烈な一蹴りによりシアンの身体は後方に大きく吹っ飛び、壁を壊して部屋の中へと姿を消した。

「ミホーク!!」
「お前は、何故刀を取る」

再び同じことを聞いたミホークは、吹っ飛んだシアンの側へと近づく。後ろで喚くシャンクスのことなど既に頭の片隅にもなく、シアンを蹴り飛ばしたことで殺気立つ〈赤髪海賊団〉の船員達を一瞥さえせずに、壁が壊れたところで立ち止まった。

「答えよ、ロイナール・D・シアン」

ミホークは胸元にぶら下げていた小さなナイフを手に持つと、土煙の中ごほごほと咳き込む音を聞き、すぐに斬りかかった。これにはシャンクスも見過ごせず、慌てて腰に下げていた刀で受け止めようと動いたが、それよりもミホークの方が速かった。
大きな物音が辺りに響き、船は崩壊寸前。

「だーっ!!! ミホークやめろ!! シアンが死んじまうだろ!!」

――ガシャァァン!!!
それでも音は止まない。本格的にシャンクスが動こうとしたとき、か細い声が皆の耳に入り込んだ。

「…………だ…」
「聞こえぬ」
「……る、ため、」
「聞こえぬ」

ガラガラ…と、木のクズが落ちる。ゆらり、と立ち上がった小さな人影は、ふらふらと危なっかしくもミホークを睨みつけていた。

守るためだ!!!!

スラッと鞘から刀を抜き、ミホークに迫る。相手は大剣豪、彼から見ればその太刀筋はガラ空きもいいところだが――…。
フッと彼は微笑を浮かべ、背中の黒刀に手を伸ばした。
――ガキィィン!!

「は、ぁっ……は…」
「……脇が隙だらけだ。それではこうして――…」

ミホークは素早くシアンの背後に回り、指摘した脇へと黒刀を振り下ろし、ピタッと寸止めした。あと数秒止めるのが遅ければ、刃はシアンを斬っていただろう。

「すぐに反撃され、命を落とす」
「ハァッ…は、っぁ……」

すぐ身近にある刃にシアンは恐怖を煽られ、ぺたりと座り込んでしまったが、桜桃を握る手は緩められることなく明確にミホークへの闘争心を露わにしていた。

「……立て」
「………へ…」
「おれの修行は生半可な奴には務まらん。覚悟してついて来い」

それって、つまり。
シアンは言葉の意味が分かると同時に満面の笑みを浮かべ、「はい!」と気持ちの良い返事をして立ち上がった。どうやらミホークのお眼鏡に叶ったようだ。

「はぁ……一時はどうなるかと思ったぜ…」
「とりあえずは良かったな、お頭」
「あァ。……にしても、まさかシアンが立ち上がったのは、復讐じゃなかったか…」

復讐だと思っていた。それを糧に刀を握ったのだと思っていた。だけど蓋を開けてみればどうだ、それとは真反対のものだった。

「まさか、守るためとはなァ!」

嬉しそうに、泣きそうにくしゃりと細められた瞳に映るシアンは、早速始まった文字通りの死ぬ気の修行に苦戦していた。何度も何度もミホークに吹き飛ばされ、心を折られても仕方がないという仕打ちにも耐え、身の丈に合わない武器で彼に挑んでいく姿は、なんとも美しい。

「……ギャバンにも…ヘリオスさんたちにも、見せてやりたかったなァ…」

もう、その願いは二度と叶わないけれど。
思わずそう願ってしまうくらい、今のシアンはただひたすらまっすぐに、前を見据えていた。

――それから二年。ミホークから渡された鍛錬ブックを基本に、彼から様々な戦闘方法を学んだ。しかしそれもシャンクスが〈フーシャ村〉を訪れたことで終わりを迎える。――ガープに、見つかったのだ。
ロイナール・D・ヘリオスとディオネの娘がいると知っていたガープは、しばらくシアンを預かるとシャンクスに打診し、彼もすでにシアンが仲良くなっていたルフィとともにいた方が良いかもしれないと思い、彼女をガープに預けた。
この出逢いが、のちに大きく影響を与えるだなんて知らずに。

――月日は流れ、再び〈赤髪海賊団〉に戻って来たシアンはまたミホークからの手ほどきを受け、“剣聖”の名を轟かせることになるのだった。






そして、今。

「はァァァアア!!!」

――キィィン!!!
王下七武海として、一国王として、ジョーカーとして名を馳せるドンキホーテ・ドフラミンゴと対峙できるほどに、その力は強くなっていた。
すべては、「守るため」に。





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