04

 本を読み終わり腕時計を見ると、時刻は十七時三十分過ぎ。そろそろ夕飯の支度をしようと本を持って寝室に向かった。


 棚に本を戻し、二人を見ると少しくっつきながら一緒に寝ていた。……うちの子供たちが可愛すぎる……とりあえず数枚写真を撮ってからタオルケットを掛け直し、二人の頭を撫でた。よしっ、ご飯作ろう。あっ、その前にお風呂沸かそ。




 今日の献立は鮭の塩焼きとわかめスープ、ツナサラダだ。お米を研ぎ、炊飯器にセットしたら料理を作っていく。


「ただいまー!」
「おかえりなさーい」
「手洗ってくる!」
「はーい」


「わぁお夕飯!?わたしも手伝う!」
「ほんとう?それじゃあきゅうりスライスしてくれる?」
「うん!」
「手切らないように最後の方はフォークに刺してやってみて〜」
「はーい!」
「ありがとう!」

 二人で鼻歌を歌いながら料理を進め、最後に鮭をグリルで焼く。

「ふうっよし!一旦終わり〜津美紀手伝ってくれてありがとうね!」
「えへへ!もちろんだよ!」
「んー!可愛いっ!」
「あはは!お母さんおおげさだよ!」
「そんなことないよ!津美紀は可愛い可愛い私の家族だよ〜!」
「!えへへっ、ありがとうお母さん!わたし宿題するね!」
「えらいね〜!じゃあお母さん恵とせらとお風呂入ってくるね!」
「分かった!」

 津美紀をぎゅうーっと抱きしめてから寝室へ向かい、まだすやすやと寝ている二人に声をかける。

「せら〜恵〜お母さんとお風呂入ろ!」
「んぅ……」
「ほらせらも起きよう」
「ん〜……スピー……」
「んもう」
「ん……おかあさん、おはよぅ」
「恵おはようっ」
「せら、おきて」
「んん〜おにいちゃん……」
「せら〜、もうお兄ちゃんは起きてるよ〜」
「ん……おはよ……」
「はいおはよう!今から一緒にお風呂入ろっか!」
「「は〜い」」
「二人ともえらい!じゃあお布団きれいきれいしてくれる?」
「わかった」
「ありがとう恵!いいお兄ちゃんだね!」
「……うん」

 せらはまだぼっけっとしているが、寝起きのいい恵は進んで布団を整えてくれていた。恵も津美紀と同じように、せらが生まれてからはよりいっそう姉や兄としてありたがる。恵は津美紀ほど表情には出さないが、喜んでいるのは丸分かりだ。小さい頃、恵は幼児返りをする事があった(それはそれは可愛かった)けど今となってはもう立派なお兄ちゃんだ。……もう少し幼児返りした恵も見たかったのだけれど。


 タンスからせらと恵の洋服を取り出す。丁度布団を整え終わった恵の頭を撫でてお礼を言う。照れながら頷くこの子は有り得ないほど可愛い……それに対してせらちゃんはまだお寝ぼけさんのようだ。せらを抱っこして脱衣所へ向かう。

「つみきおかえり」
「わ!ただいま〜」
「せら〜、お姉ちゃん帰ってきたよ!」
「んん〜、おねえちゃん、ただいま……」
「んふふっ、せらおかえりだよ笑ただいま!」
「じゃあお風呂入ってくるね〜宿題頑張れ!」
「がんばる!いってらっしゃい!」



 収納からタオルと二人のパジャマ、私の部屋着を取り出す。一旦カゴに全部入れて振り向くと、恵がせらの服を脱がせてくれていた。

「恵ありがとう〜!流石お兄ちゃんだね!」
「……うんっ」

 おもちゃ箱からゾウとカエルのおもちゃを取り出してせらに渡す。

「よしっ!お風呂へゴー!」

 早速シャワーからお湯を出し、手で温度を確認する。いい具合に調節したらシャワーフックにかける。
 恵は最近少しづつ自分で洗えるようになってきた。自分のことは自分でやりたくなってきたらしく、少し寂しいけど微笑ましく思う。

「おかあさん、おみずいれてー?」
「いいよ〜!はい!どうぞ」
「ありがとう!」

 ゾウとカエルのおもちゃは水鉄砲の形になっていて浴槽のお湯を体のタンクに入れ、蓋をしてせらに渡す。それを受け取ったせらは壁に付いている濡れると色が変わる的型のシート目掛けて発射し、遊んでいる。この水鉄砲は少し大きいので直ぐには水が無くならないから頻繁に水を入れなくていい。とても優秀だ。
 恵が体を洗っているうちに自分もぱぱっと体を洗いシャワーで流す。

「恵一人でできるの凄いね!」
「……うんっ」
「上手に洗えてる!よし、流そうか!」
「じぶんでやってみてもいい?」
「もちろん!ちょっと待ってね〜……はいどうぞ!」
「ありがとう」

 少し水圧を弱め、シャワーを渡すと少し泡は残っているものの粗方落とせている。ここで残っている泡を私が落としてしまうのはもったいないので、恵の手の届く範囲で残っている泡を教えて、自分で流させた。

「うん!初めてなのに上手にできたね!」
「おかあさんのおかげだよ、ありがとう」
「うぐっ……ど、どういたしまして!」

 健気な可愛さに心を打たれてながら、少し残っている泡を流してあげる。

「それじゃあ頭洗おっか!まずは頭をいっぱい濡らします!ちょっと上を向くとお顔にお水かからないよ〜目を瞑ってもいいからね!じゃあお母さんが先にお手本します!……はい!じゃあ次恵どうぞ」
「わかった……こう?」
「うん上手にできてるよ!……おっけい!それじゃあお母さんが仕上げしますね〜!」
「おねがいしますっ」
「はーい!……よし!それじゃあ目を開けて?次はシャンプーで洗います!シャンプーを手のひらに出して少し泡立てるんだけど、恵のは最初から泡だからやらなくてもいいよ!」
「わかった……これくらい?」
「そうだね!それじゃあ頭につけるんだけど目を瞑って髪の毛をわしゃわしゃ〜ってします!」
「わかったっ……これむずかしい……」
「難しいよね〜、最初はみんな上手に出来ないから大丈夫!」
「おかあさんもできなかった?」
「そうだね、お母さんも出来なかったよ〜」
「そっか、よかった」
「うん!よし、じゃあお母さんが仕上げしますよー!」
「はいっ」
「はいOK!じゃあ少しお顔にお水かけるねー……はい終わり!じゃあ目を開けてください!次はシャンプーを流します!これはさっき頭濡らした時と変わらない!お母さん見ててね〜……OK!じゃあ次恵!」
「うんっ」
「うん!上手上手!じゃあ仕上げね〜……はい終了!そしたら次はリンスです!これは簡単だよ〜手のひらに一プッシュ出して髪の先っちょにつけます!」
「やってみる」
「お!上手だね〜そしたら流します!……はいどうぞ!」
「うん」
「出来てるよ〜!よし、ちょっと仕上げね!……はい終わり!じゃあお風呂浸かろっか!ちょっと待ってね〜」
 桶にお湯を汲み、体にかける。
「よし!入ってていいよ!!せら〜お兄ちゃんにゾウさんとカエルさん渡してあげて?」
「はいどうぞ!」
「ありがとう」
「偉いね!じゃあせらはここ座ってくださーい」
「はーい」

 そのままちゃちゃっと体と頭を洗ってあげ、せらを先に入れて私も湯船に浸かる。

「はぁ〜あったかーい!」
「あったかいね!」
「おかあさん、せらみて」
「ん〜?わぁ!びっくりした!」
「おにいちゃんいまのどうやってやったの!?」
「おとうさんにおしえてもらった」
「せらもやりたい!」
「てをね、こうして……そっちじゃないよ、こっち」
「む、むずかしいぃ……」
「せらにはちょっと難しかったか笑」
「いっぱいれんしゅうしたらできるよ」
「うん!あしたもおしえて!」
「うんいいよ」
「ありがとう!」
「せら良かったね〜恵もありがとう!」
「うん!」「うん」
「じゃあ一緒に後十数えたら上がろっか!」

 そうして少しゆっくりめに数字を数えてお風呂を出る。私は一旦バスタオルを巻き、恵は自分でせらは私が体を拭いていると玄関の鍵を開けるガチャガチャという音が聞こえた。すると脱衣所のドアが空いて、甚爾くんが入ってくる。

「甚爾くんおかえりなさい!」「おかえり」「おかえり!」
「おう」
「服着せたらリビング行くね〜甚爾くんは今からお風呂入る?」
「あぁそうする」
「はーい!」

 ささっとパジャマを着せて、自分も部屋着を着る。洗面所の棚から保湿クリームとドライヤーを取ってリビングへ移動する。


「甚爾くんー!お風呂どうぞ!」
「ああ」

 荷物を片付けていた甚爾くんに声を掛けて、ローテーブルに移動する。

「お母さん!宿題おわったよ!あとで丸つけしてほしいの!」
「えらいね!お疲れ様!分かった、ちょっとまっててね〜」
「いまからかみかわかすの?わたしも手伝うよ!」
「そう?ありがとう!じゃあ洗面所からもうひとつのドライヤー持ってきて、せらの髪乾かしてもらっていい?あと、この保湿クリーム塗ってあげて欲しいの、恵はお母さんね〜」
「うん」
「分かった!せらちょっとまっててね!」
「わかった!」


「おまたせ!じゃあお姉ちゃんのまえにすわってください!」
「はーい!ケホッ」
「大丈夫?」
「うんだいじょうぶ!」

 津美紀にも助けて貰いながら二人の髪を乾かし終え少し整える。

「はい終わり!津美紀ありがとうね〜とっても助かりました!」
「えへへ、どういたしまして!」
「髪乾かしてこれ片付けたら丸つけするから待っててね〜」
「はーい!」
「あ!そうだ、恵、せらちょっとこっち来て!」
「なぁに?」「どうしたの?」
「お披露目会で作った画用紙、もう乾いてると思うからお姉ちゃんに見せておいで」
「!そうだった!ありがとうおかあさん!おにいちゃんいこ!」
「う、うんっ」
「そんなに慌てないの笑後でお母さんも行くね」
「わかった!」

 少しスキンケアをして髪を乾かして、ドライヤーと保湿クリームを仕舞ってリビングへ戻り、津美紀の宿題の丸つけをしようとすると津美紀の声が聞こえてきた。

「わぁ!二人ともとっても上手ね!」
「えへへっ、でしょ!」「……うん」
「さいしょはね、おりがみだけだったんだけど、おかあさんがこうしようっていってくれたの!」
「そうだったんだー!さすがお母さんだね!」
「作ったのは二人もよ」
「おかあさん!」
「よく出来てるでしょ、今度これを飾る額縁買いに行こうと思うんだけど、みんなで一緒に行かない?」
「行きたい行きたい!」「ぼくも」
「がかびちってなあに?」
「額縁ね。写真とか絵とか大切な物を壁にかける物だよ〜」
「?そうなんだぁ」
「これ分かってないな」
「まあいいんじゃない?」
「そうね、要するにお買い物なんだけど、せらも一緒に行かない?」
「いく!」
「そっか!じゃあ今度の休みに行こうか!お父さんにも一緒に行けるか聞いいてみるね!」
「「「はーいっ」」」
「はい津美紀。96点だったよ!賢いね!」
「えへへ、ありがとう!」

 とっても嬉しそうに笑う津美紀の頭を撫でているとお風呂から上がった甚爾くんがリビングに来た。

「出たぞ」
「はーい!じゃあ津美紀お風呂入っちゃって〜」
「分かった!」
「おとうさん!これみて!!」
「あ?」
「せらとおにいちゃんとおかあさんでつくったの!」
「そうか」
「みて!これがしろとくろで、これがおとうさんだよ!」
「俺だけやけに上手いな」
「おとうさんはおかあさんがかいた!」
「お前かい」
「えへへ」
「あのねあのね!これかざるがかびち?っていうのみんなでかいにいきたいの!おとうさんもいこ?」
「お前絶対額縁が何かわかってないだろ」
「うん!」
「はぁ」「ブフッ」
「せらあおられてるよ」
「?うん!」
「グフッ」
「「だめだこりゃ」」

 声を揃えてため息をつく恵と甚爾くんが微笑ましくてそばにいたせらをきゅっと抱きしめた。

「ふふっ、そういう事で一緒に行こ?」
「はぁ、わーったよ」
「やったー!おとうさんもいっしょ!!」
「うん、良かったね!じゃあお姉ちゃんがお風呂出る前にお席座っておこうか!」
「はーい!」「うん」

 元気よく返事をしてくれる二人の背中をポンと押して私と甚爾くんも一緒にダイニングテーブルに向かった。
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