06 伏黒家の末っ子

「うえぇぇ……ゲホッ……ゴホッ」
「せら、ないたらもっといたいいたいなるよ」
「うん……グスッ……ケホッ……おにいちゃん、おてて、つないで、」
「いいよ」
「グスッ……おねえちゃんにもあいたぃぃ……ヒック……ケホッゴホッ……ゲホッ」
「お姉ちゃんは今は学校よ。帰ってきたら会えるから、それまでお母さんとお兄ちゃんと寝んねしてよう?」
「ケホケホッ……うん……ぅぅ、おかあさん……」
「えらいえらい。大丈夫、お母さんはここにいるよ」

 母親が同年代の子達よりも白く小さいその手を優しく包み、頭を撫でる。生まれつき体の弱い少女、もといせらは苦しそうに咳をしながら目を瞑っていた。出来ることなら変わってあげたいと、ただ頭を撫で時に背中を摩ってあげることしか出来ない自分に、母は何度目か分からない悔しさを抱えていた。

「寝てるか」
「うん。今寝たとこ」
「そうか」
「お仕事抜けて大丈夫だった?」
「昼休憩だ。おっさんには伝えてある」

 玄関のドアが開き暫くすると寝室へ甚爾が現れる。手に持っていたビニール袋にはせらの好きな飲むヨーグルトと経口補水液、食べやすそうなプリンとゼリーが入っている。
 甚爾は飲み物だけ袋から出してせらの枕元へ置いた。

「わざわざありがとう甚爾くん」
「あぁ」
「恵もありがとうね。移るといけないからお父さんとリビングに行ってて?」
「……うん。せら、はやくよくなってね」
「優しいね。恵のおかげですぐ良くなるよ」

 ピピピっと鳴った体温計を見れば三十七度八分。母は冷えピタを取り換えながら荒く息をする娘の頬を撫でた。
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