第二話 少年A!!

 少年A、彼の名前は伏黒恵!!現在ピチピチの年長さんである!今しがた自宅から一番近いこの公園での砂遊びに飽き、砂場の小さな段差に座り込み、いじいじと自身が作った山を触っていたところだった!面白味のない行為に彼は嫌気がさし、砂山をいじることをやめ、ただただ空を見上げていた!昼の明るい太陽が照らした彼の横顔は、キメの細かい肌が輝き、ふっくらとした頬、幼さのあるスッとした鼻筋、少し吊り上がった猫目には長い睫毛を侍らせて、まさに美である!!そんな彼は現在義姉の津美紀の帰りを待っているところであった!



 彼、伏黒恵の現在の家族構成は自身と義姉のみ。何故かお金だけは大量に置いてあり、子供二人での暮らしなのにそこに関して不自由は無かった。


 物心着いた時から母親はおらず、実の父親は滅多に帰ってこない。そんな日常が当たり前化したある日、父が再婚した。相手の女には自分と同じくらいの子供がいて、津美紀と呼ばれたその女の子は母親とはあまり似つかず、明るく優しい、人に好かれる性格で、自身のこともすぐ受け入れてくれた。しかし、そうして始まった家族四人の生活はたった半年で終わりを告げた。──津美紀母と自分の父がもう一ヶ月も帰ってこない。帰ってこないことはよくあったし、慣れていたのだけど一ヶ月はさすがに初めてで少し不安になった。それから親二人には二度と会うことがなかった。だが、会っていないだけで一度帰ってきたのだろう、母親の衣類や化粧品などが消え、机には大金が入った小さめのアタッシュケースが置いてあった。初めて中身を見た時、これは使ったら危険なことに巻き込まれるんじゃないかと躊躇っていたが、直ぐにそんなこと言ってる場合ではなくなってしまい、少しづつ使っていった。
 お金は使っても、時間が経っても、ヤのつく人達が来ることも無く毎日平穏で、津美紀の人懐っこい性格は近所の人達にも気に入られ、日々助けを貰いながら何とか生活することが出来ていた。

 だが、そんな今、彼はついに限界を迎えてしまっていた。


「ひまだ……」


 そう……圧倒的暇に頭を抱えていた!!


 津美紀が小学生になって一人でいる時間が大幅に増え、有り余る時間、暇を、さまざまな方法で潰してきた。しかし、何度も繰り返していれば徐々にそれすらも暇そのものとなる。お金を使って何かをするのは嫌で、一切お金を使わない遊びをしまくった。だがもう限界だ。津美紀が小学校に行っている間に訪れる、小さな公園の砂場に手と膝を着き、四つん這いになって項垂れていた。
 その時!ありえないことが起こった!

「うわぁ!」

 なんと地面に手がずぷりと入ってしまったのだ!手首くらいまで浸かり、怖くなって急いで手を引いた。……手首まで使ってもまだまだ底に着く感じはしなかった。地面の中はひんやり冷たかったし。意味がわからなかったが、これが常識では出来ないことなんてまだ小学生にも満たない自分でもよく分かる。その後、また地面に手を入れようとしてみると簡単に出来てしまった。

 ……偶然では無いかもしれない。

 摩訶不思議な出来事ではあったが暇を持て余していた彼には、それはそれは魅力的な出来事だった……!

「じゃあ行ってきまーす!」
「いってらっしゃい」

 今日も津美紀が小学校に行ったあと、いつもの公園へ向かう。この公園は見晴らしが少し悪く、人通りも少ない。幼児が遊ぶにはだいぶ不適切なのだが、今の彼にはそんなことを考える脳は残っていなかった。

 公園に着き、人がいないことを確認してから地面に手をつける。

「つめたい……」


 初めて出来た時から二週間経ち、慣れてきた頃、思い切ってどれくらい入れれるのか試してみた。すると案外深くはなく、肘の当たりまで入った時、中指が冷たい底の部分に当たる感覚がした。腕を左右に振って壁があるのかどうか調べてみたところ、どうやら横には広がらず、手を入れた時にできた穴の直径から変わってはいなかった。

 実験をしてからは、それが広げられるのか試行錯誤する日々だった。その結果得られた情報はよく分からないけど力を込めると穴が横や縦に広がる事。やってみようと思えば自由にできた事。だがその形を維持するためには力は込め続けなければいけず、体力と気力が必要だという事。まだこれだけしか分からないが、伸び代は十分だ。

 今日は色んな発想でこの穴の使い方を広げてみる事にした。実験をしてから昨日までの一週間は体力を付けるために走り込みや筋トレ(遊具遊び)をした。それによって最大限に広げた穴を持続させる時間を少しだけ長くすることが出来た(多分)。そんな訳で次は発想なのである。

 まずは形。この円柱状の他に球状にしたり、四角くしてみたり、はたまた星型にしてみたり。やはり頭の中で想像出来れば形は容易に変化した。

 次は深さや幅。さっきと似てるけど、こっちの方が実用性が高そうだ。手のひらサイズの直径で深さを広げてみる。すると最初は肘くらいまでだったのが腕の付け根くらいまで入ってもまだ手が着く感覚がなかった。これ以上入ったら出られなくなっちゃいそう……

「……もしかしてじぶんいがいもいれれる……?」
 
 そう気づいた時にはもう行動していた。走って家に帰り、数少ないおもちゃの車や、ぬいぐるみなどを入れてみる。取れなくなったら怖いからお気に入りでは無いものにしておく。

 すると、あら不思議!簡単に全然入ってしまった。

 ──これはとてつもなく便利なのでは……?

 もう一度その中に手を突っ込むと車はなくなっていた。焦って車どこだ!?と思いながら中を漁っていると急に手に何かが握られる感覚がした。それを握ったまま上へあげてみると、それはさっき探していた車のおもちゃだった。

「おもちゃのことかんがえたらとれる?」

 今度は車のおもちゃとくまのぬいぐるみを入れる。そこに手を入れてクマのぬいぐるみを思い浮かべると柔らかい感触がしてそのまま持ち上げてみると思った通りクマのぬいぐるみだった。

 今日は大発見の日である!

 それからはどれだけものを入れられるのかやってみると、何も入れない状態で最大限広げた時分のおもちゃや数少ない絵本などを入れることが出来た。でも、まず最大限に広げるのに力がいるのと、これは新発見だが、ものをいっぱい入れると重いリュックを背負ってるみたいに肩が重くなるような感じがした。これは入れたものの数なのか単に総量なのかは分からないから明日はそれを試そう。もうすぐ津美紀が帰って来る時間だ。これは誰にも言わない僕だけの秘密の魔法。バレないようにおもちゃを元にあった場所に返して大人しく絵本を読むことにする。

ガチャ

「ただいま〜!」
「おかえり」
「よし!ご飯作るね!」
「手伝う」
「ありがとう〜!!」

 読んでいた絵本を小さい本棚に戻して手を洗う。
 そうだ、明日は砂も入れてみよう!それならスコップも持っていかないと。やりたい事が沢山あってワクワクが止まらない!

「何かうれしいことあった?」
「……なにもないよ」
「えー?ほんとー?」
「ほんとだよ」

 危ない危ない、秘密がバレてしまうところだった。なんでもないからと返して夕飯の手伝いをする。あー、早く明日にならないかなぁ



 そして冒頭に戻る!果たして彼は秘密の魔法を隠し通して使いこなせる日が来るのだろうか!!彼の成長も物語もまだまだこれからである!