修学旅行編完結後 休止期脱毛症

「でもきっとそれ以上に、私は見てほしかったのでしょうね――」
「、ぐすっ、ぅく、」

 ゆらりと揺られる船の屋根で朱雀の隣に座り、声を殺すように顔を埋めてその涙を隠す。――白虎の妖術のその先。知る権利があるのは、雪ちゃんもだよと、朱雀は言った。あの時はまだ、放心状態で返答はできなかったが、晴明が結界を直したあと、朱雀に二人の話に連れていってほしいとお願いした。

「これは僕と貴方の――」
「少し、離れようか」

 おいで――優しい声色と表情で、朱雀がゆるく両手を広げる。朱雀に抱きかかえられ、船を後にする。さわやかな秋の風を頬に感じているはずなのに、心の中はひどく雨模様だ。ぐるぐるとよくわからない、わかりたくない感情がうずめき涙が止まらない。自身の肩を濡らし続ける雪に、朱雀は只々あやす様にその頭をなでてやることしかできなかった。――なにも、知らなかった。父がどんな気持ちで妖怪になったのか、何のために今を過ごしているのか――何を望んでいたのか。父と出逢い、同じ屋根の元で暮らし、泣いて笑って苦しんで、いろんなことを共にしてきた。この十二年、自分は父の何を見てきたのだろうか。時に叱られ時に迷惑をかけ、しかし父は常に自身を愛してくれていた。勿論自分だってそうで、父のことはこの世の何よりも大切で大好きな存在だ。



「落ち着いた?」
「はい、ごめんなさい……」
「ぜーんぜん。ほら!これ食べよ〜おいしそうだよ!」

 朱雀に連れてこられた喫茶店で、目の前に差し出されたオムライスを見る。――料理の苦手な父が、唯一作れる自身の大好物。そんなものを前にして、今の雪が耐えられるはずがなかった。

「あらら、また止まんなくなっちゃったね」

 はいはい、よしよし。小さな机の対面から、取り出したハンカチで雪の濡れた頬を拭い頭を撫でた。相当、参っているのだなと、朱雀はこの小さな少女を思いやった。

「っ、おい、しっ……ぅくっ、」
「うん。美味しいね」

 スプーンですくったオムライスを次々に口へ放り込む。こんな行儀の悪い食べ方、いつもはしない。しかし、今はもう人目をはばからずに我を忘れたかった。朱雀はそれを見ても何も言わない。美味しいねと共感して、それぞれに食事をする。――父であれば、はしたないと注意するだろう。でも、それは、自分に父として見せてくれていただけの道満の一面に過ぎなかったのかもしれない。……忘れるために場を離れ店を訪れ食事をしているのに、いつでも思い出すのは、模範的で優しく厳しく冗談の言ってくれる父である。結局、自分は忘れられないのだ。大好きな父が。囚われ続け、



「パパ、今いい?」
「どうしました?」

「国語で分からないところがあって安倍先生に相談したら、一時間目が始まる前なら教えられるって言ってくれて、だから、明日から早めに学校に行くことにしたの」

「そうですか」
「あ、でもちゃんとご飯は作るから!朝ごはんは冷めちゃうけど、お弁当と一緒に机においておくね」

「だから、その……行ってもいい、?」

「いいですよ。ただし、一つ約束してください」
「あっ、うん。なに?」

「必ず無理はしないこと。勉強を頑張れる雪はとても素敵ですが、勉強がすべてではありません。一番は自分を大切にすることですからね」
「、」

 それをパパが言うの……?――

「うん、わかった」
「いい子。じゃあ温かくして寝なさいね」
「うん。おやすみなさい」
「はい、おやすみ」

修学旅行二日目から三日目(終了時まで)クラスメイトが眠る中、一睡もできず。朱雀を呼び出し話し相手になってもらっていた。

一周間 朝勉だといって二時間早くに学校へ行く。実際に晴明に見てもらっている時間は20分ほどで、ただの口実。父と距離を取りたかった。
二週間後 髪が抜ける

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