09.「同じ世界を見られないふたり」

初めましてヴィクトル・ニキフォロフです。日本のフィギュアスケート男子選手、勝生勇利のコーチになるために来日したんだけど。勇利にはフレンドリーに接してるつもりなのに、すっごく素っ気ない。ねえマッカチン、勇利との接し方間違っちゃったかな。

そして、ゆ〜とぴああかつきで勇利と話してる時に広間に来た少し野暮ったい雰囲気の眼鏡を掛けたツカサ。勇利より頭一つ分くらいに背の高い彼。

第一印象はいつでも笑顔で時折毒を吐くけどなんだかんだで優しい好人物だった。勇利も彼を信頼して懐いてる様で二人の関係が羨ましいと思ったよ。

「ねえ、ツカサ。勇利と仲良くなるにはどうしたらいいかな?」

「仲良くなるには、か。そんなこと考えたことないや。ヴィクトル、お前は俺とここまで話すようになる前・・・そういうの考えてた?」

「うーん。そう言われれば、いつの間にか話すようになってたね・・・」

ミナコが働いてる"スナック花中"で二人は酒を飲みながら話していた。

「そういうことだと思う。フィーリングが合えば気づかないうちに話せるようになってるさ。俺と勇利も最初会った時から一年間は一切話さなかった。

キッカケも大事だろうな」

「そうよねぇ、司は教え子達の中では一番の人見知りだったから大変だったわ」と、カクテルを用意してくれたミナコに司は困った様な表情をする。

「・・・ツカサって、バレエでもやってたのかい?」

ほら見たことか、驚いたようにヴィクトルはこっちを見てくるし。ミナコ先生は意地の悪い笑みを浮かべてるようだからわざとだろう。何て返そうか___。

「幼少期に少しな。あまり才能も無かったから、途中で辞めたけど」
「残念、ツカサの演技とか見てみたかったな〜」

嘘のようで本当のことだ。ヴィクトルは覚えてないかもしれないけど、三年前まで俺とお前は同じ舞台に立ってたんだぞ。

あの時からヴィクトルの演技はひたすらに人を魅了し続け、驚きを与え続けていた。

「さあ、俺はもう遅いから帰る。ヴィクトルはまだここで飲んでるのか?」

すでに深夜の二時だ。しかし、ヴィクトルはまだまだ酔ってる様子はないみたいだし。ロシア人は酒に強いのは本当なんだな。たしか・・・テキーラだったか、あれをショット飲みするのは流石というか。

「もうそんな時間なのね。そろそろ閉めようかしら」
「まだ飲み足りないけど、閉まる時間なら仕方ないね。そうだ!ツカサの家で飲み直そうかな」
「はぁああ!??帰れよ?」

にこにこと笑ってとんでもないことを言ってのける彼に司は叫ぶ。

「閉店作業あるから、司〜ヴィクトルのことは任せたわよ!」
「ちょっミナコ先生ー!それってあり!?」

そうして店じまいと共に無理やりにヴィクトルに付き纏われ、自宅にて二次会が始まってしまう。後日、司は二日酔いで寝込んでいた。

「ツカサの家って意外と広いんだね!」
「意外とは余計だっての!」