重い、とにかく重い。ゆ〜とぴああかつきにしばらく滞在するらしいヴィクトル・ニキフォロフ。国際便で届いた彼のたくさんの荷物。滞在するどころか、家具ばかりで引っ越しする勢いじゃないか。
勇利と協力してなんとか運び終えるが当のヴィクトルはのんびりしていて。
「ワーオ!こじんまりして、クラシカルなお部屋だねぇ」
そうして、初めて目にする和室に目を輝かせていた。まず、なんで温泉を楽しんでた俺まで手伝わされることになったのか。館内着を着てマッサージチェアでダラケていたら、たまたま通りかかったヴィクトルに「ねぇ、司ー暇そうだから、俺の荷物運んでよ!」と無理やりに引きずられた。
(一応、客なんだけどな!)
あの荷物の量を見て勇利一人にやらせるのは可哀想だったため、手伝ったけども。
「ソファとかある?」
「ないです・・・狭くてすいません、使ってない宴会場しかなくて・・・」
「不安そうな顔してるね。コーチ料は出世払いにしてあげるから、請求書は改めて。ツカサもお疲れ様!今度、何か買ってあげる!」
「・・・・・・期待しないでおく」
にっこりと微笑む彼に勇利は「さ、さんきゅ」と返すしかない。司は心から同情する、選手時代に知り得た彼の"情報はとにかく誰かの言う事は聞かない・忘れっぽい・突拍子も無いことをする"だった。
それに振り回される者は相当に苦労するだろう。
「勇利、君のことを何でも教えてくれ。どんなリンクで滑ってる?この街には何がある、好きな女の子はいるの?
練習より先にまず、お互いを信頼していける関係から作っていこう」
するりと手を撫であげられビクリと体が震える、一気に詰められる距離によってヴィクトルの秀麗な容貌が視界いっぱいに。思わず息が止まる勇利はぼぅっとその顔を見つめていれば彼に顎を掴まれて互いの口がくっつきそうな近さ。
慣れない勇利は顔を真っ赤に染め上げ、我に返れば慌てて壁際まで逃げてしまう。ヴィクトルは「なに?なんで逃げるー」と残念そうだ。
「ぁッ・・・いや・・・なんでもないです・・・!」
「お前ら・・・俺の存在忘れてないか?」とわざとらしくため息を付けば勇利は「ごめんなさいーーい!!!」と叫んで司に土下座する。
「勇利、五年も海外にいたならスキンシップに慣れろ!いちいち、過剰に反応しすぎだって」
俺とのハグには照れないだろ!勢いよく彼を抱きしめてやれば、やはり驚きはするがそうでもない。
「ワーオ!いいね、俺もツカサと仲良くなりたーい!ハグハグー!」
「おい止めろ!暑苦しい!!!」
ぎゅーと二人をまとめて腕に閉じ込めるヴィクトル。そんな彼に普段は優しく大人しい司は思いっきりキレるのだった。