「あ?それでこんなとこで隠れて暮らしてたのかよ」
お風呂上がり、ユリオは司に買わせたアイスを片手に庭が眺められる廊下に設置された椅子で足をプラプラさせていた。そんな俺は温泉に入る為に来ただけだったので、財布の中身を数えてる。
「別に隠れてたわけじゃないさ。三年経てば引退した選手なんざ忘れられる・・・それで良いと思ってる」
ギリでマッサージチェア分のお金はあった・・・。
(引退後に解説やモデル、テレビ露出してれば別だけど)
「そうかよ。このアイス・・・うめぇな」
そうに決まってるだろ。売店で一個、三百円以上する高いカップアイスを選んだんだから。俺が食べたかった。
「スケートはまだやってんのか?」
「ん、ああ。アイスキャッセルはせつでスタッフとして働いてるよ」
「俺が行ったときツカサいなかったろ」
「あの時は休みだったからな。まあ、バッチリお前たちの姿はテレビで見た」
もちろん勇利がユウリに回し蹴りされて吹っ飛ぶところも。あれは痛そうだった。でも勇利のことだから大丈夫だろうさ。
「暇なら明日、俺の練習に付き合え」
「なあ聞いてたか?俺スタッフとして働いてるから、閉館時間まで仕事なんだけど」
「知るかよ!ついでに晩御飯も外で何か食わせろ」とたかるユウリに俺はため息を付くしかない。たしかに昔から奴はこういう性格だった・・・。
ロシア人ってみんなこうなのか?否、俺の周りにいるロシア人が特異なのだろう___。朝の通勤時間にATMに寄ってお金下ろしておこう。
選手時代に稼いだ分は全部貯金していたから少しならばお金に余裕はあった。
「さあ子供は寝る時間だ。部屋に戻ってねんねしろよー」
「なっば!?なにすんだよ、てめー!」
ユウリの背中を彼が滞在する部屋の方へ押して俺はそそくさと退散する。リクライニング施設に行ってまったりするんだ。
俺は真っ直ぐとリクライニング施設のマッサージチェアに飛び込む。極上の気持ち良さに爆睡してから目覚めた司は、こっそり着いて来ていたユウリが同じく隣のマッサージチェアで寝ているところを発見し、改めてため息を付く。
(クッソ・・・怒りたいけど、寝顔可愛いな・・・)
起こすのも忍びない。仕方なく熟睡するユーリを抱え、彼の部屋まで連れて行く途中で会ったヴィクトルに託した。