14.「薄氷上にて」

これがユーリの滑り。三年前はジュニアのグランプリファイナル終了後に、シニアの試合を見に来ていたユーリに絡まれたため彼の演技を見ることはなかった。

でもこうして実際に目にすると彼は天才の部類に入るだろう。

「ツカサ、お前のステップの踏み方教えろ」

「わーかったって。一回しかやらないからよく見とけよ?」

ザっと司の目の前で止まった彼はいきなりそう告げる。素直に言う事を聞かないと後が怖いから俺は仕方なくスケート靴に履き替え、リンク上に出た。

一応、仕事中なんだけどな!

緩やかだが伸びがあり滑らかな彼のステップシークエンス。中でもリンク全体を波状に円を描くサーペンタインステップ、さらに片足のみで滑ってターンを踏むワンフットステップが得意だった。

自分の内で曲を思い描き___それに合わせてターン、そしてチェンジエッジをする。

「・・・すごい」

ユーリの口からふと漏れた率直な感想。アイツが現役時代はヴィクトルが絶対王者で決して金を取ることはなかった。

だが、司の持つステップと指先から足先までを使った演技など一つひとつの技術はヴィクトルを凌いでいた。ヴィクトルにはないそれをモノに出来れば俺のシニアデビューは絶対に優勝出来る。

(サーペンタインステップは一番体力を使うからって誰もやらない。でも他のステップと違うのはリンク全体を波状に滑り・・・体の動きを栄えさせる演技が出来る)

かつてのコーチにそう教えられた。誰もやらない事を逆にやる方が観客達の目に入るだろうと。

「大体分かった。体に動きがあるように、隅々まで意識をすりゃいいんだろ」

「そうだな。ロシアの選手は体の柔軟性と表現の柔らかさが良い。だからきっと、俺よりももっとフレキシビリティな演技が出来るはずだ」

ほらやってみろ、と彼に促されユーリは先ほど見たばかりの滑りを思い出しながらその通りに滑る。司はそれをじっと観察しながら、時にはアドバイスをする。

(・・・こういうの懐かしい)