ヴィクトルが振り付けをした演技を滑る勇利。十分に彼の艶やかさは伝わるのだが当人は納得がいってないらしい。
本人にしか分からない曲と演技の解釈もあるだろうしな。じっとヴィクトルと勇利のやり取りを眺める。
二人してリンク上に立ち、ヴィクトルが細かい指導をしていた。ユーリは彼に言われるがままに寺に行ってしまったから、妙な所で素直だよ。
「勇利には教えるんすか?司さん」
「いや、勇利の場合・・・俺はアドバイスしないほうが良いんだ」
「・・・・・・?」
首を傾げる豪に司は口を開く。
「俺はアイツの憧れじゃない。道標だと以前言われた、道標はいずれは通り過ぎるものだから束の間でしかない・・・出来ることは、勇利を道から外れないようにしてやるんだよ」
その先から引っ張り上げるのはヴィクトルなんだと思う。ユーリはまだスケートに迷いがあるようだから、気になってしまう。なんであんなにしつこく着いてくるのかは分からないけど、放っておけなくて。
「思うんですが、司さんはコーチ向きっすよね。ヴィクトルは何ていうかコーチをしてるようで選手の立場からのって感じがするんで」
「・・・確かにヴィクトルは少し前までは常に優勝することが当たり前だったから、あまり優勝経験のない勇利のことが理解出来ない部分はあるかも。
それも『温泉 on ICE』で、もし勇利のコーチになるんならこれから知っていけばいいさ」
勝負の勝ち負けじゃなく、信頼を・・・絆を。その中にはヴィクトルが経験したことがないものも沢山ある。