「ツカサ。本当にこんな練習量でいいのかよ」
「本番前は皆それぞれの方法があるけど、ユーリの場合はまだ若いからこれでいいんだよ。テーパリング・・・本来だったら一週間前から徐々に減らさないといけないけど、今回は期間が一周間だしな」
俺が若い時に行ってた本番前の調整をユーリにも教えていた。テーパリングは一週間前から徐々に練習量を減らしつつ、技術的に重要な部分は継続して体力をあまり消費させずに行う調整法だ。
ユーリには最初の四日間を集中トレーニングし、残りの三日間はステップの細かい部分と腕の動きに重点的に練習。食事は藤井さんにアドバイスを貰って_____。
「って嘘だろ!なんで俺がお前のコーチみたいなことをやってんだ!?」
「今更かよ。バッカじゃねーの、てめーが自分からやってきたんだぞ」
自分の世話好きが災いし、司は頭を抱える。滑ることはあっても、選手だとかコーチだとかあれだけフィギュアスケートに関わることはしないようにしてたのに・・・だ。
それを横目に柔軟を終わらせたユーリはリンクに入る。ショックから立ち直った司も共にリンクへと続けて入った。
「これで最後だ、明日はどっちも応援してるけど・・・自分に負けるなよ」
そうして始まる司とユーリの最終調整___。ユーリは振り付けを演じながら司のことを考える。アイツのステップを物にするために練習したこの一週間。以前よりは完璧とは程遠いが自分自身でも技術は上がっていると感じてる。
偶然とは言え、この機会を逃すものかと。チャンスがあるならば何がなんでも掴み取るのはユーリの性分だった。同じ名前を持つ勝生勇利は恵まれた環境にいながら向上心はないように見える。それが余計に腹立たしく思えたのだ。
(ツカサは、再会時に比べて今はあれだけ目を輝かせてやがる。あの目はフィギュアスケートを諦めた奴がするもんじゃねぇ)
一番の決め手はエリジブルを手放していないこと。手放していれば二度と選手としては復帰できない。
ヴィクトルとツカサとクリスはトライアングルの好敵手同士だった。自分の世代はそんな実力を持った選手はいなかったから。楽しそうに話すヴィクトルが正直羨ましかった・・・。
自分もいつかそこに混ざりレジェンドとか言われるヤツ等に勝って勝って・・・上に立ちたいと決めたんだ。