「勇利頑張れよ」
肩をとんっと叩くと勇利はこくりと強く頷く。そして真っ直ぐと司を見据え。
「僕、絶対にこのチャンス逃したくないです」
「うん。お前の一週間の成果、皆に見せつけて来い」
「はい!」と初めて自信に満ち溢れる彼に大丈夫だと安心する。いつもの勇利ならば本番前の緊張で会話することもままならなかったから。
ちょうどユーリの演技が終了し拍手大喝采。彼がリンクから出ると同時にすれ違うように勇利が氷上へ行く。戻って来たユーリはというと自分の演技に納得がいってなくて表情が曇っていた。
「ユーリ」と声をかけた。むすっとした彼に俺は一度ハグをして。
「ティ・アバヤーティリナヤ」
「なっ・・・ソレ、馬鹿かよ!ふんっ」
「おーおー元気になったか?」
ははっと声に出してわらう司は満足げだ。それに対してユーリはドスっと司の腹に一発を喰らわし、彼は呻き声と共に腹を押さえて床に倒れ伏す。豪と優子は痛そうにそれを見てるだけ。
「そういうの女に言えよ!ヴァーカ!」
「・・・痛ェ・・・」
リンク外の二人を置いといて、一方では曲がかかり勇利の演技が始まる。慌てて二人はリンクへと目を向けるのだった。
艶やかな色香を感じさせる彼の冒頭の振り付け。アレは・・・男の色香じゃない。
(そう来たか・・・)
解釈を変えてきたな。上手く勇利らしさを見つけたようで良かった。今回はヴィクトルのコーチ権を争う試合。己の色香を魅せつけ色男、この場合はヴィクトルか。その世界一の色男を口説き落とす美女___勇利。
ジャンプは数ヶ所ミスはしたが、全体的に点は高い。とくにアイツのステップシークエンスは昔から評価が良いから、さらに加点となるだろう。
今回は勇利の勝ちになるはずだ。だが、ユーリも未完成の部分を完成させてくれば良い勝負。どちらも良い競争相手同士になりこの先は更に面白くなるな。
*作中の言葉の意味
※「ティ・アバヤーティリナヤ(魅力的だね)」