「はあああ・・・疲れた・・・」
ヴィクトルとの練習は僕の夢で望んだことなんだけどね。
よいしょ、と伸びをした僕はロッカールームで練習着から私服に着替える。たくさん汗をかいたから温泉に入ろう。着替えが終わり、帰宅の挨拶をしようとリンク場へ顔を出す。
今日出勤の司さんは屈んで黙々とリンクの穴を粉々の氷で塞いでる。こうして見ると元オリンピック、フィギュアスケート男子銀メダルの選手には見えないよね。
世間にバレたくないからか、顔を隠すように髪を伸ばして・・・眼鏡を掛けて。きっと、自分のスペースへ誰にも踏み込まれたくないという拒絶の表れなんだと思う。
(司さんの抱える病、詳しくは教えてもらってない。あれからどれくらい治療が進んでるのかも知らない)
知らないから、僕はソレには触れなかった。触れることで傷つけてしまって、一生スケートから離れてしまうんじゃないかと不安だからだ。僕はヴィクトル同様に、否それ以上にずっと傍で見てきた彼のスケーティングが好きだから一生見れなくなるのが怖い・・・。
ずっと見ていたい。その願いは僕のエゴだ。もしかしたら司さんはスケートを___。
最後にリンクを撫で、穴を埋め終えた彼はバケツを片手にこちらへ振り返る。
「ん?どうした勇利。リンクの穴を直す俺に見惚れたか〜」
「ち、違いますよ。じゃあ、お疲れ様です!僕はお先に失礼しますね」
ははっと揶揄うように笑う彼に勇利はドキっとする。慌てて取り繕って僕はリンク場を後にした。
「なんなんだ?勇利のヤツ」
一人、残された司は状況が分からずだった。