06.「私に翼があった頃」

俺の今シーズンのテーマは"翼"。長谷律に移住して、俺は"自分らしさ"を手に入れることが出来た。自分らしさをこの演技で表現し、上に進みたい・・・結果を残したい。

衣装は黒に青のスワロフスキーを散りばめたもの。青は前進色、昔の俺からの脱却をイメージした。

飛翔する様にレイバックスピンの体制からビールマンスピン。そして最後に空高く飛ぶ鳥のごとく両の手を宙へと突き出した。それに合わせてフィナーレを迎えたSPの曲。

「わああ!!司さあああん!今のすごかったですっ!」

ぱちぱちぱちと拍手をする勇利。その視線の先には今シーズンのSPを滑るフィギュアスケーターとしては先輩となる佐久間司。日本男子フィギュアの中では最前線で活躍してる人だ。彼のステップは滑らかで体の動きに波があり、指先までの細やかな演技。ヴィクトル・ニキフォロフとは違った魅力のあるスケーティング。

とくに今回の演技は今までの彼とは違ったイメージの内容だった。

「ありがとう、勇利。次はお前の番だろ?頑張れよ」

トンっと僕の背中を押すと司さんは笑って彼のコーチと共にキスクラへ行ってしまった。僕も頑張らないと、司さんには負けてられない!

モニタに映る司が視界に入る。緊張した面持ちでジャッジの結果を見守る彼とコーチ。少し時間を置いてから点数が発表された。

『佐久間選手、日本のSP最高得点の記録を更新しました!』

(・・・流石、司さん)

ごくりと唾を飲む。この人に勝ちたい、一位になりたい。その気持ちが勇利の競技者としての闘志に火を付ける。そうして始まる自分の滑走___。

『優勝は佐久間選手です、やはりと言いますか全日本のトップスケーターの誇りを感じる演技でした!そして二位は同じ長谷律市在住のリンクメイト、勝生選手!!』