04.「仮面の下で歪んでいくの」
「おにいさまのきば…すごく、くるしそうです・・・」
開いた口から覗く鋭い牙に触れる。そこから何かを感じ取ったのか悠はおもむろにそんな事を言ったのだ。熱に犯される俺はどうもしてないと安心させるように弟を抱きしめる。
「僕には悠がいるから、苦しくないさ・・・」
力なく微笑む李土に悠は首を傾げる。
「おかあさまとおとうさまは、おにいさまに会ってはだめって・・・・・・いわれました。
ぼくはおにいさまと一緒にいてはだめなの?」
寂しそうな表情の彼は大好きな兄に精一杯抱きつく。どうしてだろう。どうして、家族なのに僕はお兄様に会ってはだめなのか。それが僕には分からなかった。
でもお兄様は分かっていたのか、おもむろにこう仰られた。
「・・・そう。悠が会いたくないと思うのなら、会わなくて良い「いやだ!!」はるか・・・?」
「おにいさまはぼくのおにいさまです・・・大好きな・・・ずっと一緒にいたい・・・」
ポロポロと大粒の涙を流す弟に、俺は愛おしさがこみ上げる。腕の中のその柔らかい髪に顔をうずめた。くすぐったいけれど構わない。幼子の柔らかい素肌、首筋に牙がうずくのに知らないフリをする。
両親が弟を俺に会わせない理由くらい知っている。玖蘭家の長男である俺、他の者より発育が早い俺に過度の期待をしていり。周囲にも同情されるほどの幼少期の厳しすぎる教育がそれである。
余計なことに気を取られないようにと、必要最低限の者以外との接触を制限しているのだ。
「こうなることくらい分かっていたから、決めてたんだ」
「おにいさま・・・?」
(・・・悠のような優しい者が生きられる世界にするには―――)
悠のような者が統治しなければ意味がない。
「悠は皆が幸せに暮らせるほうがいいだろう?」
「しあわせ・・・」と言葉に詰まる弟。幸せということも知らなかったのか、あの人たちは何をしていたんだ。ぎちりと歯を食いしばり憤る李土は両親への怒りを沸々と燃やす。
「お前と皆が一緒にいられるということだ」
「いっしょに・・・。うれしいです!ぼく、おにいさまと一緒にいられるなら!」
「そうだな・・・」
嬉しそうに微笑む悠はそれこそ幸せそうだ。ただ、俺は一つ嘘をついてしまうことになる。
(その世界に、きっと俺はいない・・・・・・)
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