05.「許してなんて言わせないから」


悠に部屋から絶対に出ないことを言い聞かせて俺は両親の前に居た。これからどうなることやら。不安でいっぱいの胸の内を隠すように李土は表情をなくす。頬から一筋の赤を滴らせて。

「一条家の当主も、他の貴族院の者もお前を次期当主にと推している。私も無論、そのつもりでお前を教育させてきたつもりだ。なのに、今さら―――お前はそれを放り出すというのか。お祖父様にも何と言い訳をするつもりだ」

冷静に父は言っているが、その声音はとても低く相当の怒りを買っているだろう。怒るのは当たり前だ。今まで天塩にかけて育ててきた息子が、今さら反抗してきたんだから。

現にこうして彼から気が放たれて、俺の頬に傷が出来ているのだ。しかし、純血種であり怪我はすぐに再生し元の傷の無い肌となる。俺の血は少し他の玖蘭の者より濃いらしい。現にお父様は平静を装っているが俺の血の臭いに酔って興奮気味だった。

「それは僕も分かっています・・・ですが、僕は・・・・・・僕には玖蘭の当主は向いていない。自分の事は自分が一番分かっているつもりです・・・。

だから、僕は玖蘭の跡目から外れたいと思ってま・・・ッ」

甘い味が口内に広がる。口を切ったみたいだ。父に打たれた頬に手を添えて李土は強く睨みつけた。

一瞬、そのオッドアイの双眸に気圧されるが、そこは長年生きてきた純血のヴァンパイア。すぐに冷静を取り戻し、ゴホンと咳をする。

「お前が何を言っても、跡目ということは変わりはしない」

出かける準備をするために父は自室へと去っていった。思わず、歯を食いしばり拳を握りしめる。

ヴァンパイアの能力ですぐに塞がった頬の傷口があった所から、零れ出る血を袖で拭う。その場に残った母は心配そうにこちらに近づいてくるのが気配で分かった。

「李土・・・・・・」
「お母様の言いたいことは分かってるつもりです。お父様が僕を大切に思ってくれていると、僕の才能を見出してくれているのだと―――。けれど、僕にだって意志はあります。何でもお父様の言う事を聴く傀儡ではない。それは誰にも阻む権利はないでしょう。意を変えるつもりは毛頭ない・・・。

悠のことだって僕はあの人も貴方も同罪だ、許すつもりはありません」

色違いの瞳を伏せた息子はスタスタと外へ出て行ってしまった。いつからこうなってしまったのだろうか。長い年月をかけて徐々に深くなる親子の溝に、彼女は悲しげに彼が出て行った先を見つめる。

最初は家族として上手くやっていたつもりだった。

けれど、あの子には何か思う事があったのだろう。私はそれを理解してあげられなかった。あの人も息子には厳しく当たる方ではなかったのに。李土の言った悠のことは別邸に追いやり、親としての愛情をかけてあげられてないことだ。あの子が弟のところにこっそり通い詰めてることも知ってる。

弟だけが家族なのだと李土は遠回しに私達を拒絶した。もう元に戻ることはできないのかもしれない。

「ごめんなさい・・・李土、悠」




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