08.黄色いバラを胸にうずめて
たとえば、全てを手にしたとする。その先には何があるのだろうか。
(何もない……ここはカラッポの世界だ)
利用するか利用されるだけの世界。三千年も見てきたこの世界には何もない。そして同じ事の繰り返しである。
だから終わりを迎えるその時まで、僕はヴァンパイアらしいヴァンパイアで有り続けようと決めた。俺を縛ろうとするモノに流されて生きるのは終わりにしようと…。
「カナメ、勉強は終わった?」
「はい!!一条に手伝ってもらいました」
嬉しそうにノートをこちらに見せびらかして褒めてもらおうと必死なカナメの頭を撫でてやり、俺は一条を睨みつける。
(教える側が手伝ってどうするんだよ!)
「あまりにもカナメ様の悩める姿を見ていると……父性が…」
要するに可愛いカナメの姿を見て手伝いたくなる欲を我慢できなかったんだな。
「一条、後で僕の部屋に来い」
「我が君…元老院の集まりが「嘘をつくな。元老院の会合の予定は明後日だろう?」はっ!そ…そうでしたね。後ほど………失礼致します」
明らかに嫌そうにそう言ったアイツはそのまま部屋を退室していった。
「お父様、一条は何か悪いことでも?」
「個人的に用があるだけだ」
こてんと首を傾げる義息子のカナメ。本当に悠ソックリだ。将来はああなるのかと恐怖心が僅かに芽生えるが、自分が育てるのだ。きっと大丈夫だろう。おそらく。
「来週はお前の祝賀パーティがあるから、忙しくなる。それまでには全て自分で解けるようにしておけ」
「今度のパーティ、絶対に行かないといけないんでしょうか…?」
すごく行きたくなさげな表情を浮かべるカナメに李土は苦笑いを浮かべる。かつての自分に重なるから。
確か、悠に無理やり連れて行かれたよな。何千年も前の記憶だからあまり覚えていない。
「…参加することに意味がある。それ以外は媚びへつらう者達の集いの場だ____。自分のこと以外は気にしなければいい」
「……分かりました」