見下ろす景色は愚鈍な革命


04.綺羅星が腐敗する夜


『李土様…なんて麗しいお方……流石は我らの純血の君…』

『えぇ、李土様に牙を立てられれば本望ですね』

あちこちでそういった会話がされる。聴覚が良い分、聞きたくもないことも必然的に耳にしてしまうのだ。

一条家が主催し、一条派が集う夜会。そこへメインゲストとして俺も参加していた。一条派ということは、一条家が仕える李土も必然的に主となる。

現在のヴァンパイア界の中心、玖蘭家を取り仕切る悠を表の王とするのなら。見えない所で暗躍する彼は裏の王。どちらも欠けてはならない表裏一体。

「ずいぶん陶酔されてるようだな、其方は」
「されたくてなったわけじゃないさ…閑」

壁際の椅子に腰かける彼女は面白そうに笑っていた。

「…太いパイプを持つことが出来る夜会は重要だ。それに___この会場にいる者全てが一条派というわけでもない。

監視として穏健派の者も参加しているようだし…逆にヤツ等をこちらに引き込めれば穏健派の動向も知ることができるだろう?」

「末恐ろしい婚約者殿だ…」

「暇つぶしに僕を殺そうとするお前も恐ろしいよ…」

ある時は一条派の貴族の会談中にハンターが襲撃してきたり、またある時は玖蘭本家に俺の居場所を知らせ、悠と樹里との本気の追いかけっこをさせられたり。

いろいろと散々な目に合わせられている。

「李土様…今宵は贄が用意されております故、こちらへ…」

もうそんな時間か。メイドに促されて席から立ち上がる李土。

「ヴァンパイアになりたいと、志願している者…か。不思議なものね、人間になりたいと望むヴァンパイアもいればヴァンパイアになりたいという人間もいるのだから」

「知性ある生物とは皆そういうものだろう」

互いに敵対種族であり、対極に位置する種族…共通している点は欲望に忠実なことだ。

「李土様…いかがいたしましたか」

こちらの様子を伺うメイドに「なんでもない」と告げ、彼は別室へと去って行った。

「李土、其方はそのどちらでもないということか?」

ぽつりと呟く少女の声が誰にも届かない。

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