「久しぶり、大叔父さん」
「アレは元気か?」
大叔父さんの言うアレとは母の事だ。
「うん。結構まともにしてた、使用人全員クビにしてたけど…」
久々に帰ってきたかと思えば屋敷には誰もいないし。今回はまだマシだった。
「その話は聞いている、新しい使用人は手配済みだ。そちらは心配するな。今日は千里に見せたいものがあってね___」
屋敷の持ち主である叔父に誘われ、地下へと続く階段を降りる。急に呼び出しをされたかと思えば、この下に何があるのやら。
「…なんか、やな感じだね。なに?後を継げとかは無しだよ…」
階段を降りれば降りるほどに感じる変な空気。でも、どこか懐かしい感じもするけど。
「お前はもう、子供ではない。だから支葵家の者として知る必要がある、私が苦心して隠してきた最大の秘密を…」
開かれる大きな扉。より一層増す、重い空気。
(…何これ)
部屋に一歩入れば視界に入ったのは一人分の大きさの石棺。その上から吊るされたガラスの器に入った血液が石棺の中へと滴り落ちる。
石棺は大量の血溜まりとなっていた。
この血臭は、寮長と同じ純血種のモノだ。
「大叔父さん、これは…?」
「…訳あって保護していたんだ。お前のお父さんだよ…」
「……死んだんじゃなかったの?気持ち悪い…」
死んだと聞かされ、その詳細も教えてくれなかった父。こんなものを父と言われても到底理解など出来るわけがない。
「…実の親に向かって酷いな千里。これでもだいぶ再生したんだ、でも今はこれが限界かな。だから、大きくなった君に会えるのを楽しみにしていた」
石棺の陰から現れた子供、見知った顔。
弟のように思っていた親戚の子の秋人だった。
秋人は、さも当たり前のように石棺の淵へと座った。
「お前の話を聞かされた時は驚いたよ…僕に実の子がいたとは。でも今は、良かったと思っている…だが、お前は違うだろうな」
「僕を知らないだろうから…」と呟く少年。
「興味ないよ…存在さえ知らなかったんだから。それより、秋人は?」
父親が乗っ取っているその躯の本来の人格のことだ。一番はそれが心配であった。
「安心しろ、精神の奥深くで眠っている。僕が意識を本体に戻せば、じきに目覚める」
李土は力を解放し、借り物の躯はぷつりと意識を失って倒れた。
地面に倒れ込む前に秋人を大叔父さんが抱き上げる。
「僕は、これ以上は待てない…千里、お前が必要だ」
石棺の中の血がこぽりと波打ち、次第にそれらは形を成していく。
「何をッ…」
まだ回復しきっていない体を起こし、ずるっと立ち上がった俺は千里へと手を伸ばした。動かないように力を使用して癒えていない傷口から溢れる血を無理やりに彼の口許へ運ぶ。
「嫌、だ……!!」
それでも尚、抵抗しようとする息子に李土は口を開いた。
「純血種の血の魔力には勝てない…僕の血を飲め。お前は散々、僕の血を飲んだんだ。今更抗うことはできないぞ千里」