「お久しぶりですね、李土叔父様」
「あぁ、お帰りカナメ」
十年ぶりの再会に李土は回復しきっていない躯へ鞭打ち、カナメへ微笑みかける。
千里に会うため一時的に支葵家の地下に移動した棺は今は一条家の地下へ戻した。もちろん、あまり身動きのできない躯なので棺に入った状態で移動するしかない。その時は複雑な心境であった。
まるで墓場まで運ばれる遺体の気分だ。
「実の息子と初めて会った時の感想はどうですか?」
(…当たり前だろう)
「…可愛かった」
「それは良かった…一翁殿からも聞いてますよ。息子会いたさに純血の血を安売りし、血族の躯を借りて子供のフリをして息子と遊んでいたと___」
どこか棘のある言い方に李土は黙りこくるしかない。全て事実である。
「僕、はバレないように人間に紛れ込んで真面目に勉学に励んでいたというのに…叔父様が隠れてそんな事をしていたと聞いた時は呆れましたよ…」
「……」
その通りだ___。言い返す言葉も思いつかない。
「それはもういいです。それよりもまだ回復できないのですね……純血種であっても、十年ではそれが限界とは…」
「悠に言え…肉体を可能な限り粉砕されたから」
「そうですね、そうします」
優しかったカナメはどこにいったのだろう。たった十年でここまで変わるか?フツー。
朝早くに呼び出され拓麻は例の一室の前にいた。この向こうにはあの人がいる。
緊張のあまり、ごくりと唾を飲む。
何故、お祖父様ではなく僕なのだろうか。
扉の両側に控えるお祖父様のメイド達。彼女達は「ご主人様が中でお待ちです」と扉を開く。
これはもう引き返すことは出来ない。おもむろに足を一歩中へ踏み出す。あまり頭を下げたくない存在であるが、仕方なく拓麻は祖父と同じくその場に跪く。
「僕をお呼びしていると聞きました」
「朝早くごめん。早急に拓麻と会わせたい者がいるから…」
「僕に、ですか…?」
千里の躯で答える李土様。実体を見たことはない、けれどどこか雰囲気は玖蘭家というべきか枢やご両親方と似ている。
「僕の可愛い甥っ子だよ。拓麻と年も近いから紹介したくて」
李土様の合図によって入ってきたのは___。
「玖蘭カナメです。よろしく…」
「カナ、メ?」
名前や雰囲気こそ一緒であるが顔の造りは知っている枢とは違う。顔立ちが似ていて同姓同名なんてありえる…?
(それに、純血種の気配)
動揺を隠しきれない拓麻にカナメは苦笑する。これが当たり前の反応だ。
「代々仕えてきた一条家の者には全てを話してきた、そして彼らは僕の成し遂げたい事を手伝ってきてくれた…。拓麻、お前の亡き父もだ。そのせいで、彼は死んだ……僕を恨んでくれてもいい、今までの一条家がそうしてきたようにお前も同じことをしてもいい…ただ、己の道を見誤らないで欲しい」