(なんで俺がこんなことを……)
心の中でため息をついて机と向かう。今日中にこれを仕上げなければならないからな。
動けるはずのない李土が何故、こうして身動きが取れているのかと彼の状態を知っていれば誰もが不思議に思うだろう。
「さあ秋人様、次の問題へいきますよ」
「はい、先生」
専属の家庭教師は教科書をめくり、次々と問題を出す。しかし、生徒である彼は簡単には解けずにうーんと唸った。
「先生、ここの所がわかりません。理論は分かるのですが、どう解けばいいのか…」
「どれどれ。あぁここですね、他の生徒の子たちも同じところでつまずいていらしたわ。この問題の論点は…」
「わかりました!」と嬉しそうに微笑み、すらすらとノートへと計算式を書いていく。教師の彼女はノートへと目を落とし、赤マーカーで丸を記した。
「お見事です秋人様」
(子供を装うのは疲れる…)
純血種っていうのは、血縁関係のある者であれば意識を乗っ取り相手の体を自由に操ることができるらしい。
つまり、親戚の子供の躯を借りてるってことだ。もちろん本人には許可取ってるから大丈夫なはず___。
「先生…千里お兄ちゃんは今日は来るんですか?」
「支葵様、ですか。そうですね…そろそろ来る時間かとは思いますよ」
「そうですか」とにこにこと嬉しそうに微笑む少年は李土の気配は一切感じない、ただの子供である。