友達の頼ちゃんと外出先で買い物をしている時、コートの裾を誰かに掴まれる。
足下を見れば、幼い男の子が泣きながら私のコートを掴んでいた。
「…ママ…」
「……迷子…?」
最初はなんのことかと思ったけど頼ちゃんの言葉ですぐに状況を理解する。
少女、優姫はしゃがみこみ未だに泣き続ける子供の目線まで視線を合わせ___。
「ママと…はぐれちゃったのかな?…」
できるだけ優しく話かけた。それに対しこくりと頷く少年。
「ママ、のところ連れてって…」
(…こんな小さい子を放っておけないよね)
「頼ちゃん。私、この子をお母さんのとろこまで連れて行くから。お買い物すませてて」
ふぅ、と息を付き優姫は頼へそう伝えると少年の手を取る。
子供の足だからはぐれた場所までは近いだろう。
「名前はなんていうの……?」
「……秋人」
泣き止まない少年からかろうじて聞き取れた秋人という名前。
「わたしは優姫。秋人くん、はぐれた場所は分かるかな」
「…うん。優姫お姉ちゃん…」
(お姉ちゃん、か…)
呼ばれたことがなかったからすごく新鮮。
秋人に引っ張られる形でついて行く優姫は、周りをきょろきょろと気にする。さっき声をかけてきたデパートから出てしまったからだ。
「秋人くん、本当にこっちでいいの?」
「うん……もう少し。大丈夫…」
「人通りから外れちゃったけど……ここ?」
「うん……」
目の前には廃ビル。人気は全くなく、あまり長居はしないほうがいいかもしれないけど…。
母親は本当にこの付近にいるのだろうか。
見たところ、秋人の着ている服は高そうなものだからそれなりの家の出。
目元をこすってやっと泣き止んだ彼のフードがはらりと落ちる。
「ありがとう、優姫お姉ちゃん。僕、一人で怖かったんだ…」
にこりと微笑んだ秋人はとても可愛らしい顔をしていた。
(男の子かな…)
「心配だから、ママのところまでついて行くよ?」
「優しいね優姫お姉ちゃん…ありがとう」
頬にキスをされた途端に急に体から力が抜け落ちる感覚。
「あ、れ……?」
最後に見えたのは手を振る秋人くん___。
どさっと優姫は倒れ、秋人はそれを見つめる。
(これが、俺の姪か…)
悠と樹里の二人目の子供で、カナメの妹。優姫という名前、二人が付けそうな名だ。小さい自身の手で彼女の頬にぺたりと触れる。
暖かい。
こんなに優しい子に育って良かった。夜会を抜け出し街を散策してれば思わぬ拾い物をしたようだ。今日の夜会にはまさか弟妹達が参加するとは思わなかったから。
同じ純血種ならば俺の存在に気づくだろうし。
頃合いを見計らって一条達の元に戻ろうと思ってた。
「妹の方は、樹里にそっくりなんだな…」
さあ、そろそろ戻るか。一人女の子をこんな所を放置するのは心配だ。
簡単な術式で彼女へ守護の術をかける。
「さようなら…」
後ろを振り返らずにその場を後にした。