14.泥だらけの糸に縋りついている僕より

「悠・・・樹里・・・・・・」

傍らにある写真立てにそっと触れる。右手でそれを持ち上げじっと見つめた。写真には三人の男女___。

幼き頃の李土と悠、そして樹里だった。それを胸元で抱えると祈るように握り締める。禍々しい気配に窓の外から眺める。

ここから少し離れたところだろうか。壱縷の血臭と禁忌の双子のハンターが一つになったのだと感じ取った。

今でも自分の選択は合っているのかと疑問に思う事はある。それが彼らを幸せにすることが出来るのかと___。

長い年月を生きた俺は内側から綻び始め、判断に鈍っているいるのではないか。
でも今の自分にはそうする事しか出来ない、だからこの機会を待っていた。

「ずっと傍にいてやろうと言ったけれど、お前たちには嘘を付いてしまったな・・・」

もう俺には永遠に等しい時間は苦しい。苦しくて辛くて、気が狂いそう___。

(もうすぐだ・・・)

もうすぐに、俺はこの異質な存在から抜け出すことが出来る。彼らを幸せにすることが出来る。

今思えば秋人という存在がこの世界を歪めてしまったのかもしれない。だからこそ、俺はその責を果たすべきだと思うのだ。

最初はこの世界が異質だから、凄惨な人生を歩む者がこんなに多いのだと。けれど異質なのは自分の方であった。

写真立てを戻し、俺は部屋を出て行く。

「終わりを奪い・・・始まりを彼らに返そう」

戻る / 次へ

Back

合計26ページ

Home