16.渇望するほど遠くなる
「・・・優姫、危なっかしい子だ。樹里の武器を振り回して・・・それは本当に危ない。僕はそれをよく知っている。悠を瀕死の状態まで追い詰める為に、そういう武器の力を借りたからね」
くすりと微笑めば優姫は母から譲り受けたアルテミスをキツク握りしめる。この十年、父は腹部に負った怪我の養生をしてきた。それは治りがわるく、かなりの時間を要していた。
それもこれも、すべては目の前の叔父である玖蘭李土が元凶。
「黒・・・」
「下がってくださいセンパイ!私の相手です。私がここに残ったのは・・・」
心配そうに声をかけようとした英に被せるようにそう言った。そして何か気配を察した優姫は彼を屋根の上から下へと突き落とす。すぐに屋根に植物の蔓のようなものが襲いかかる。
「うっわ・・・黒主ッ!?」
屋根の殆どが破壊されるがそれでも尚、無傷の純血種。
「おい、いつまでそうしているつもりだ?ヴァンパイア」
瓦礫に腰かける彼。
「初めまして、かな。随分と壱縷に世話になったよ。錐生零」
クツクツと喉で笑う彼はメタモルフォーゼによって下半身を分解させた。宙にゆらりと浮かぶヴァンパイアは凶悪さを感じる。体の一部を変質させた巨大な牙は足下から零の背中を狙い襲いかかった。
それをアルテミスで攻撃を止める優姫。
「なにを・・・している」
「ずっと昔から決めてたから・・・私は零に味方するって、たとえ敵同士だとしても」
「仲が良い事は良きことだが、本分を忘れておるまいな」
(予定とは違ったが・・・仕方あるまい)
「そこまでです」と、零の攻撃が何者かによって防がれる。双子を喰らいハンターとして覚醒した彼の攻撃を防ぐということは相当な力を持った者。
そして、その懐かしい声色に俺は茫然としてしまう。彼らには情報が渡らない様に徹底していたのだから。
「はるか・・・じゅ、り・・・」
突然現れた二人の純血種。李土の血を分けた弟妹達であった。優姫は両親が来たことに少なからず驚く。
「李土お兄様・・・お久しぶりです」
「十年振りね」