End.貴方の犠牲で世界は回る

「さあ、行きましょうカナメ・・・」

彼女に呼ばれ、僕は屋敷の扉を開く。温かい空気に包まれた空間。僕の知らないソレに躊躇するが腕を引かれて中へ、一歩踏み出す。

唐突な衝撃と熱い抱擁。叔父様と同じ温もりだ___。

「貴方が本当のお兄様?」

こてんと首を傾げる幾分か背の低い少女。そしてその肩を抱く隣の彼。

「そうだよ、君は僕のこと・・・聞いてるんだね」
「はい、枢おに・・・枢から聞きました・・・会えて嬉しいです!」

ぎゅうっと抱き付く妹、優姫に李土はゆるりと笑う。優しくその背を撫でてやった。そして僕は彼へと視線を向ける。

「久しぶりですね、枢さん」
「そうだね。あの時以来、かな」

自分と同じ名を持つ彼は全てのヴァンパイアの始まりの祖先。今は妹の恋人だ。

「カナメ・・・僕達の子なのに、お兄様にとてもよく似ているね」

最初に僕へ熱い抱擁をした父は穏やかにそう言う。本当に叔父様と兄弟なのだとよく分かる。彼のように鋭い目つきではないが口許や鼻など顔の造りはどことなく似ている。お母様も似ているのだけど、お父様のほうが一番似ていた。

「僕は、李土叔父様にとてもよくしてもらいました。お父様達から最初の子を奪うようなことをして申し訳ないと・・・二人の分、僕はお前を愛そうと・・・一条の当麻小父様も遊んでくれました」

あの人たとの幼い頃の想い出を今でも覚えている。

「幸せそうで良かった」

自然と笑みが零れていたらしい。両親は目を細めて感慨深げにこちらを見ていたから。

「僕は、あの二人のことを尊敬してます・・・」

一条麻遠はそこには入っていない。その命をもって二人の成そうとしたことに彼は歪みを生じさせた。確かに父親のことで叔父様へ悪い感情を持つことは理解出来る。

しかし、叔父様はそれを理解した上で彼を自分の息子のように可愛がった。

選択肢も与えた。お前が憎いと思うのなら今すぐに己を殺すか、僕と一条の夢に尽力してほしいと。

彼は後者を選んだのだ。それなのに、ああなってしまった。

(・・・裏切者はもういない)

叔父様の望んだ未来を受け継ぎ、正そうとする真の一条の跡目に殺されたのだ。

「今はまだ、叔父様の死によって吸血鬼社会とハンター教会に混乱が生じてますが・・・きっと、それも時機に収まります。

叔父様の意志を継いだ者達によって___」

平和とは人によって異なるものであり、遠い道のりであるがその道は示されている。

(僕は、叔父様と出会えて良かった・・・)

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