03.何かにつけてセンシティブ

壱縷を学園へ送ってから数日___惰眠を貪ってたある日の昼間。

ドンっと勢いよく部屋の扉が開かれると金髪の彼、拓麻はベッドに眠る千里の躯を借りた李土を揺り起こした。それもかなり激しく。こうでもしないと、日中のヴァンパイアの眠りは深く起きない。

「拓麻・・・昼間だぞ・・・」と、目を擦り布団の中に潜り込んだ。
布団の中は温かくて気持ちが良い。拓麻のことなんか無視してしまえ。

「ごめんなさい、起きてください!」

バサリと布団を取り上げられてしまえば仕方なく起床するしかなかった。このやり取り、昔にもあったな。

欠伸をしつつ伸びをして覚醒した李土はじとりと拓麻を睨んだ。こういう所は彼の曾祖父の一条当麻にソックリ・・・。

「こんな昼間から・・・何の用なんだ・・・?」

「李土様、本当に良いんですか。今ならまだ皆に全てを話せば間に合います・・・!」

拓麻は寝起きの李土の肩を掴む。彼と出会ってから暫く考えてきたことだ。

李土様の考えは確かに今の時世、必要なことである。しかしそれは皆が理解したうえで達成すべきことなのではないか。一人を犠牲にした上で安寧を過ごすことは良い事ではない。

そう思ったから。だから、お祖父様のいない昼間を狙って彼の部屋に来た。

「・・・僕はこれで良い。例え皆が知らずとも構わない」
「しかしっ・・・」

それでも食い下がろうとしない彼にどうしたものかと考える。

「お言葉ですがっ僕は「御子息の躯には馴染まれましたかな李土様」・・・お祖父様・・・」

ベッドの天蓋からぶら下がるカーテンの影から現れた祖父。気配を感じなかった事に拓麻は困惑する。

「拓麻、李土様に失礼にならないように言ったはずだ」
「・・・・・・もうし、わけ・・・ありません」

鋭い視線に目を伏せ拓麻は一歩退いた。一翁は李土の目の前まで近寄り、彼の手を取るとその場に跪く。

「李土様。真に復活される日が近いと確信しております・・・さすれば父と私達の悲願も達成されることでしょう・・・玖蘭家、真の当主・・・玖蘭李土様」

「・・・はぁあ・・・揃いも揃って安眠妨害か。まあ良い・・・あの子の躯よりはそれ程力は使わないし、自由が効く。

そろそろ、黒主学園に行くとするか・・・」


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