09.二分割の劣性

純血名家、王・・・様々な呼び名がある玖蘭家。悠はその家の二番目の子として産まれた。

将来を期待されない子として。実の両親にも見放された存在だった。

幼少期から誰にも心の内を吐露できずに永続的に続くこの苦しみを僕は墓場まで持っていくだろう。

(だって・・・)

それは誰かを傷つけてしまうから。それなら僕は自分を苦しめることを選ぼう。

(いつだってお兄様は僕の一歩前を歩いてた。それがいつしか、遠く手の届かないところへ・・・置いてかれるのは怖い、辛い・・・)

吸血鬼らしくない方で血液嫌いの優しい兄。どれもヴァンパイアという生き物の枠組みには当てはまらない。きっと兄もただ独りで立ち向かい、孤独で恐ろしかっただろう。

兄の本質を玖蘭の名の重さを理解出来なかった自分への罰だ。弱さを見せることは決して許されない。疲れる暇なんて存在しない。

お兄様はその身を以て玖蘭の役目を果たした。それが全てを失う間違った方法だとしても。

永劫、体の隅々まで玖蘭に縛られることになっても彼はそれを受け入れ成したのだ。

兄と僕は表裏一体、一つの王だと言われてる。ならば次の事を成すのは僕の役目___。

「玖蘭家の者として此度の争いの責任を取り、尽力します」

そうして元老院と李土が居なくなり、統制を失った吸血鬼界の純血種の台頭へ悠は身を投じる。

李土が成したことと同じように___。



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