04.尊厳の消化

「カナメから受け継いだ記憶とお前達の話してくれた事で全てが繋がったよ・・・」

又姪と又甥を腕の中に抱きしめる。はらりと頬を伝う水滴。愛と恋はされるがままだった。

「大伯父さんって泣き虫・・・」

聞かされた話とは真逆のタイプである。大切な存在を護るためになら、戸惑いなく相手を屠ることが出来る人。冷酷で残忍でもあったけど本当は優しい人なのだとお祖母さまは仰ってた。

「・・・僕はやり方を間違えたのかもしれないな」

「それは、違います・・・!貴方がそれを間違いだと認めてしまえば、カナメ伯父様がやった事を否定することになります。

だから、間違いだったなんて言わないでください・・・」

「・・・・・・」

人とは実に弱い生き物だ。吸血鬼の時には感じられなかった程に繊細で感情に飲まれやすい。

「人間の躯は勝手が違って、感情のコントロールが上手くいかないんだ。お前達を傷つけてしまうこともあるかもしれない・・・本当に傍にいて良いだろうか・・・・・・」

ぽつりと漏らす李土に二人は静かに頷く。僕には、唯一の家族はこの二人しか残っていない。愛の本当の父親である枢は、姪の優姫ちゃんの術式で人として生きたらしい。

そして最後に、俺だけが玖蘭家の地下廟に葬られていたところをカナメが棺ごと外に出して術式を発動させたのだと聞いた。

「カナメ伯父様はとても尊敬の出来る人だと言ってました。けれど、貴方の犠牲の上で成り立つ平穏は望んでいなかったと___」

「僕は、大それたモノじゃない。悠と樹里が幸せに過ごせたらそれで良かったんだよ」

だが、父と母・・・お前達のにしてみれば曽祖父と曾祖母か。彼等は己の血筋と地位にばかりこだわり、吸血鬼界の派閥争いを激化させようとした。

「純血種は尊い存在なんかじゃない。浅ましく欲にまみれた化物・・・。僕もそうだ・・・この手はもう他者の、幾人者血で汚れている」

そうして李土は不意に力が抜け、カウチにぽふりと倒れ込む。

「大伯父さん!」「大伯父様!!」

二人の叫び声が邸宅内に響き、李土の元へ駆け寄る。

(カナメ伯父さんの術式は完璧だったはず、一体どうして・・・?)

「すまないが、まだこの躯になれてなくて・・・迷惑かける」

すまなそうに微笑む彼に二人は安心した。覚醒したばかりなのに、余計な体力を消耗させてしまったからか。体力に限界が来たのだろう。

「休んでも良いかい?」と尋ねてくる李土に愛と恋は介抱して寝室まで運ぶ___。

「・・・ありがとう」

(優しい、やさしいゆっくりと流れるこの一時。俺はそれに甘んじてしまって良いのだろうか・・・)



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