Cannibalism

「名前さん、食べる?」

「は?」

唐突に言われて素っ頓狂な声を上げる俺。目の前の坊主はすっと自分が喰らってた人間の左腕を差し出してくる。

「いや、別に良い・・・・・・腹、空いてないしな」

まず、人の食いかけ渡されて喜ぶヤツなんていないだろ。何かと俺の狩場に現れるコイツは、勝手に自分の狩場にしやがって。

俺自身、グールでも最下級の方だ。そんな俺と違って一回りも下のアイツはこの辺を取り締まるボス的存在なわけで…。そんな奴に狩場を占拠されれば勝ち目もないため、大人しく引き下がるしかない。

(俺だって死にたくないからな・・・)

「そんなこと言って〜名前さんって全然食べてないでしょ?」

「わかった、わかった・・・喰えばいいんだろ?」

引き下がろうとしないウタの手からソレを受け取る。ジっと見つめられては気まずい、だが俺がこれを食すまでは絶対にその場から動かないだろう。

仕方なしにアイツが口を付けた所とは別の場所を食いちぎる。口内で頬張るそれは味はあまり良くはないが、悪くはない。

「ハァア・・・なんでこんなオッサンに構うんだ?お前は忙しいだろう」
「だって名前さんって、面白いから」

(意味わかんねェよ・・・!)

「一緒にいて面白い人ってつまり、馬が合うってことだし。いなくなったら困るでしょ」

「余計にわけわかんねェ・・・」

「まぁ名前さんがいなくなったら、ぼくは悲しいよ」と笑うウタに苦笑いを浮かべるしかない。