許されたいと願う春の午後に

「ちょっとアンタ、盗みなんてするんじゃないわよ」

赤毛の軍人の女性はアキラの首根っこを掴み上げる。

「離せよ!馬鹿!!!」

ぷらん、とぶら下がったアキラはじたばたと抵抗を試みるが全くもって意味が無かった。

「馬鹿って言ったかしら」

にこにこと微笑む彼女。
その笑顔の裏に何かあるに違いない!

女性は掴んでいた手を離した。

「いってぇえ!」

ずしんっと地面に尻から着地し、打ち付けた部分を擦(さす)る。

「アンタに言われるとなんか腹立つわ」

(子憎たらしい顔して…生意気でシバきたくなる)

「俺だってお前みたいなガサツ女にっいてーよ!」

言葉を発し終わらぬうちに第二の攻撃がアキラを襲った。
拳骨である。

「アタシはケイナよ…ケイナ・ヴィッセル。アンタの名前、なに」

「……「な・ま・え・は?」分かったってば!!!アキラ・サザールだ…これで良いだろ」

解放してくれ、と言えば彼女は満面の笑みを浮かべて首を横に振った。

まだ何かされるのだろうか。


今までの大人たちのように_______。

「アキラ、ご両親は?」
「いねーよ」

「そう、じゃあ今は独りなのね」

そう言うとケイナはかがむと、アキラと同じ視線になる。

「これから連れまわして遅くなったりしても、何も言われなくて良かった」

がしり、と頭を鷲づかみにされる。

(やばい…)


確実に殺される気がした___。