朝起きて昨晩裕里香ちゃんが作ってくれたご飯を朝食に食べ、友人に渡す分のお土産を片手に私は学校へと向かっていた。
私の通う帝丹高校という学校だ。久しぶりの学校だなぁなんて思いながら教室の扉を開けて視界に収まった友人たちに声をかける
「おはよう、蘭ちゃん、園子ちゃん」
「凛音ちゃんおはよう」
「おはよう凛音」
一週間ぶりなんて言葉を口にしながら、はいこれお土産とそれぞれに袋を渡す
「お土産にしては多くない?」
「あれ、凛音ちゃんってコンクールに出るためにフランスに行ったんだよね?」
「そうなんだけど、さすがに一週間ずっとコンクールってわけじゃないから‥なんだかんだ4日くらいは観光につかってイタリアとドイツとイギリスにいってみたの」
「なるほどね‥」
「それで色々見てたら楽しくなってつい色々買っちゃって、小物とかお菓子とかだし二人共おしゃれだからこれくらいならいいおみやげになるかな―なんて」
そう言って笑っていると彼女たちは、小物すごく好みだなんてはしゃいでお礼に今度なんか奢るだとかどこか遊びに行こうだとかどんどんと話が広がる
「遊びに行くといえば、蘭は明日新一くんとデートだっけ?」
「そうなの?」
「ただの空手の都大会で優勝したらトロピカルランドに連れてってくれるって約束なだけだけどね」
「蘭、それを普通はデートっていうのよ‥」
都大会優勝とトロピカルランド‥このキーワードだけでもう察せてしまう自分がいた。
蘭ちゃんの空手の都大会優勝を阻止できれば工藤新一は幼児化しないのではないだろうか、そう思い空手を始めようとしたが残念なことに運動神経が良くなく阻止なんてできるはずもなかった
正直展開を知っているのにどうしようもできないのは辛いものがある。自身のことを話しても受け入れてもらえるとも限らないし、むしろ信じたとしても好奇心からの行動をされる可能性も否めない
この状況になったらなるようになれというべきか、それはおいておいても‥
「んー、お土産どうしよう‥一応新一くんにもお世話になってるしお土産買ってきたんだけど、今になって蘭ちゃんいい気しないかなぁって」
「そんなの気にしないで!友達にお土産なんて当然だし、それに付き合ってるわけじゃないし‥!」
「そっか。じゃあHR始まる前に渡してきちゃうね」
そう言って、いってらっしゃいという二人のそばを離れて、新一くんの席へと向かう。席で時間を持て余していたのであろう彼に声をかけた
「おはよう新一くん。今いい?」
「おー、どうした?」
「ヨーロッパの方にいってたからお土産届けに来たの。色々と観光してロンドンにもいってみた時に見つけたやつで、ホームズがモチーフのキーホルダーとしおりなんだけど」
はい。と渡せばホームズと聞いてきらきらと目を輝かせているは見ていて面白い
「サンキュー!もしかしてシャーロック・ホームズ博物館も見たのか!?」
「みてきたけど、私新一くんには遠く及ばないにわかファンだからさらっと雰囲気楽しんだだけなんだよね‥。私のお土産話聞くより自分で見るのが一番楽しいだろうし今度行ってみたら?」
「それもそうだな‥。にしても凛音が父さんの小説じゃなくてコナン・ドイルのシャーロック・ホームズをもっと読んでくれればホームズ語れんのになー」
あからさまなため息とともに言われたその言葉につい笑ってしまう。
「私、優作先生のお話好きだもの。もちろんホームズも好きだけどね」
「じゃあホームズももっと読んどいてくれよな‥」
「気が向いたらね。さて、そろそろ朝のHR始まるから戻るね」
手元の腕時計を見ればいい時間だ。ちょうどガラリと扉が開き担任の先生の姿が見えた
―――
朝のHRも終わり、そのまま一週間机の中に放り込まれた保護者への連絡用だったり授業のプリントを整理するだけで他に何かすることもなく1時限目を迎える
本当にどうしたものか‥現実的に考えてもフラグ的にも新一くんが幼児化できるのを阻止できない。前世の記憶というのは知っているということでだから嫌だなぁと思ってしまう。
しかし本来なら休んだ一週間分の授業の遅れを取り戻すために友人からノート借りたりしてノートを写したりこのプリントをこなすものだろう
教科書を読むだけですぐ理解できて問題もスラスラと解けてしまうこういうところは前世の記憶さまさまなのだ‥。それにしてもこれはどうしようもないダブルスタンダードである
この物語の開始状況を回避できない今、彼が小さくなったあとに関わりを持って彼の秘密を知る側になって手伝いをするか
いっそ無関心を貫くかという話になってくるだろう。しかしもうすでにここまで関わりあったことで無関心を貫くというのには無理がある気がする‥
彼もまた人間なのだ、それは私がそれを二次元としてでしか見ていなかったにしても、今ここでは生きている人間なのだ
ぐるぐると色々なことを考えて、ふと思い出す
昔私が確か小学生だった頃、風邪で熱を出して理人くんが看病してくれたときのことだ
自身の記憶のことは特に言わなかったが、すごく大きな犯罪組織のようなものに友達や家族が巻き込まれるかもしれなかったらどうすればいいかななんて声に出してしまったのだ
そうしたら理人くんは、凛音ちゃんが友達や家族を守りたいと思っているなら守ればいい。仮に狙われても僕が凛音ちゃんも他のみんなを守るからだから大丈夫。なんて言われて
それで風邪もあって弱っていたのか安心して寝たような気がする
理人くんもここでは兄という家族であり、兄に思えなくても私の大事な友人だ。そんな彼も守りたいと思っている、危険に晒したくはない
でも理人くんが言っていたことだが、私が言った犯罪組織という単語と守るからという言葉で警察という職についた人間だ。元々が出来る人なのだ
だから心配する必要も恐らくないのだろう、むしろ自身の身体能力のなさを心配するべきだった
就職先の職業だけきかされて、具体的な所属や仕事内容なんかは就職先で色々と守秘義務があるので聞いてないし理人くんは言いもしない。それでもこの世界で多分一番信用している人かもしれない
たまに理人くんに関して人に聞かれることがあれば、一応跡取りの長男息子だからとかフリーターしてるだとか、実は実家の経営手伝ってるのとか物は言いようでなんとかなっている
そもそもイレギュラーな私という存在がいろいろな人の足を引っ張るのかもしれないし、このコナンの世界の黒の組織に私が目をつけられることになるかもしれない
それでも彼らの役に立ちたいと立ち回るのは、悪いことではないと思っていたいのだ
―――
時が経つのははやいもので最後の授業の終わりのチャイムが鳴った。学校の一日を費やして考えて、理由は色々あるけれど彼らと関わりを持ち、彼らの手伝いをするときめた。
その手伝いをするのにどうすればいいかと考えながら周りの級友に軽く挨拶を済ませ、歩みを家へと向ける。
朝の会話では彼らのデートは明日と言ってたか、コナンの姿になってしまった新一くんは夜の確か彼の家の近辺に雨が降っていた頃、彼の家に来るはずだ
そこで隣の阿笠博士に自分が新一であると主張して、なんとか納得させていたとおもう‥ならば自身が工藤新一であると主張するその場に居合わせられれば都合がいい。
回避できない未来に嘆いて記憶にあることを呪っても、逆にそれを都合よく使おうとするならば、やはりこのところどころ都合のいいところを覚えている記憶という知識は私の強い味方である
すべてを知っているでもなく覚えてるでもなくしかしその時知り得ない情報は漏らさず、彼らに怪しまれないように立ち回るのは正直出来る気がしない。それでも決めたからにはやるしかない
家に着いた私は玄関に荷物を入れて庭に周り、レイのもとに向かった。
普段学校なんかで家に居なくなる日の出ている時間は庭で遊ばせて、そこまで狭くもなくかといって広くもない土地だがレイにとっては過ごしづらいのはあるのかもしれない
リビングからみてウッドデッキの奥の庭がレイの遊び場のスペースだ。
ウッドデッキの上には屋外用のテーブルと家庭菜園用の申し訳程度のプランターや、普段夜は室内で過ごすため殆ど使われない犬小屋や犬用品もおいてある
しかし庭はそれだけではない。
庭に向かう通路が家を囲うように1本ずつあり、一方は普段レイと外に散歩に向かうときに使う通路で、もう一方の通路は私の趣味のだ。
そちら側は本格的な茶会だとか茶懐石なんかで使うような通路だ。露地口から内露地いわゆる茶庭に向かう道だがこういったものをつかう機会なんて滅多にない
そんなものがある庭だと大型犬のレイには狭く感じきっと過ごしづらいのだろうと私は考えているわけで‥、だから私は犬用品の中からリードを取り出し
「お散歩いこっか」
そうレイに声をかけるのだ
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