「ぼく、どうしたの?」

その言葉を私は目の前の、幼児化してしまった彼に向かって口にした
あっという間にあたりは暗くなり、作中でも小学1年生であること、そんな子がこんなに暗い中一人はやはり危ないので声をかけることは構わないだろう。
お互いの性別が真逆だった場合、小学生女児、雨の中の帰宅途中で男性に声をかけられる事案が発生とでも言われかねない。ひどいご時世だ

その声に反応して、彼は驚きに満ちた表情とともにつぶやかれた凛音という微かに私の名を呼ぶ声に私はあえて反応はしなかった
私は傘で彼の雨除けをしながら、鞄に忍ばせていたハンドタオルで濡れた顔周りを拭いてあげる

「雨すごいから濡れちゃったんだね、とりあえずお家どっちのほうかな」

「聞いてくれ凛音!俺は工藤新一なんだ!」

突然のカミングアウトに私は一瞬戸惑った

「えーと、新一くんの弟‥?はいないし、親戚の子とか‥?」
「じゃなくて‥!とりあえずこれを見てくれ」

そう言って彼が取り出したのは私が昨日渡したお土産で‥
これを渡したのは彼しか居ないし私が何を渡したかなんて蘭ちゃんや園子ちゃんにいった覚えもない、気に入ってくれたようで嬉しいがそんな彼が私に見せてくるのは一種の身分証明のためか

「‥とりあえずまずは新一くんの家にいこっか‥?雨もひどいし‥」

この場での結論は保留として、ひとまず彼の家へと向かうのだ



―――



道中、彼が色々というかと思えばそうでもなく、どうして自分がこうなったかなんて事を考えていたのかもしれない
工藤邸へとたどり着いた私たちは彼の家のチャイムをピンポーンと鳴らした。そんなに距離を歩いたわけではないがもう雨の勢いはすっかりなくなって小雨程度になっていた

「‥新一くん、いないのかな」
「だから俺が工藤新一なんだよ!」
「いや、申し訳ないけどどう見ても小学生だよね‥?私の知ってる新一くんじゃないのだけれど‥」

そんなことを言っているとその後に言葉を続けようとしていたであろうタイミングで突然ドーンという爆発音。
ガラガラと外壁の崩れる音と共に煙の中から阿笠博士が姿を見せた

「阿笠博士!」
そういって博士に近づいていく彼をみて、目の前の現実に不謹慎極まりないが感動を覚えた

博士もまた彼の家のチャイムを鳴らそうとしたみたいで、新一くん居ないみたいですといえば、工藤新一本人だと認めさせたい彼から暴露されていく博士の個人情報に思わず失笑を浮かべた
そして彼が博士を納得させられる推理を聞きながら、納得していく博士を見て本物だーと再び感動を覚えたのだった


「ところで、君は‥」

「えっと久野木凛音です。今日は帰りがけに雨に濡れた彼を見かけて心配になったので声かけて今に至るんですけど‥」

「おお、凛音くんか久しぶりじゃの」
そういう博士とは少しだけ面識がある程度だ。
それこそ過去に優作さんの作品にサインが欲しいと新一くんにお願いしてお家にお邪魔させてもらったとき一緒に博士の家に遊びにいったりとか‥。

「お久しぶりです博士」
でもまさか新一くんとは信じてなかったなんていえば、彼に恨めしげに見られてしまう。

「凛音を納得させられる推理ができるほど情報もなかったし。それにこれ見せれば信じてくれるかと思ったんだけどなー」
「突然見せられたのが新一くんに渡したお土産と同じものでびっくりしたけど、いくらなんでもやっぱり体が小さくなるとかすぐ考えて納得できないからね‥でも気に入ってくれたみたいで嬉しい」

その発言に少し照れたような表情を浮かべ、だよな‥。と零す彼はなかなか微笑ましい。ひとまず新一くんの家に入ることになり、便乗してお邪魔する形になった



―――


彼が小さくなったことのあらましを話しているので聞くことに徹しつつ大量の本に目を奪われついそちらを目で追っていた

「未完成だった薬の不思議な作用で体が小さくなってしまったというわけか‥」
「そういうこと‥」

「たのむよ博士、天才だろ?体を元に戻す薬を作ってくれよ!」
「ムチャいうな、薬の成分がわからん事には‥」
「じゃあ奴らの居場所をつきとめて、あの薬を手に入れればいいんだな!」
「それならなんとかなるかも‥」

「いいか新一。君が生きているとわかったら奴らは君の命を狙いに来る‥!それに周りの人間にも危害が及ぶ!
君の正体が工藤新一であることは私と君と凛音くんだけの秘密じゃ。誰にも言ってはならんぞ、もちろん蘭くんにも」

自分の名前が聞こえたのでそちらをみて口を開く

「確かに体が小さくなったなんて言っても今日みたいに素直に信じてもらえないだろうし、それに無闇矢鱈に喋って小さくなって生きてるってわかったら口封じされてもおかしくない‥。」

私もそう思うよとそんな話をしていたらガチャという音とともに蘭ちゃんの声が聞こえた。

家主からのレスポンスなしにも関わらず入ってくるとは相当心配していたのだろうというのはわかっても、大切でしかも物騒な話の最中だったわけだから心臓に悪い
早く隠れろという博士の言葉に従い新一くんは机の陰に隠れた


「なんで博士と凛音ちゃんがここに‥?」
「久しぶりじゃのー蘭くん」
「わたしはちょっと色々あって‥」

「まさか二人がいるなんて思わなかった。新一は?」
「さっきまで居たんじゃが‥」

そして机の陰から物音が聞こえ、蘭ちゃんがそちらに歩みを進め目を向けている
彼を見つけかわいいー!と抱きつく様子を見て、うんうんかわいいよね私も抱きついて愛でたいなんて心の中で同意している間にも話はサクサクと進む


「コナン!僕の名前は江戸川コナンだ!」

そう名乗った彼に私は三度目の感動を覚えた


「そうじゃ蘭くん!すまんがこの子を君の家で預かってくれんか?」
「えっ?」
「この子の親が自己で入院したんで世話を頼まれとったんじゃが、ワシも男の一人暮らしでなにかと大変なんじゃ‥」
「いいけどお父さんに相談してみないと‥」
「そうかそうか。引き受けてくれるか!よかったなコナン」


そしてコソコソと二人で何か話しているのを視界に収めてやり取りを見守る
ぼく、ねーちゃん家がいいと甘えるコナンの姿にあざといかわいいとおもいながらコナンくんと蘭ちゃんが仲良く蘭ちゃんの家へ向かうのを、これから頑張れなんて思いながら見送った


「博士、何か困ったこととかあったら出来る限り協力するので言ってください」
そういってメモ帳を取り出し、携帯と家の連絡先と住所を書いて博士に渡す。コナンくんにも教えておいてもらえたら嬉しいなんてといえばわかったと応えてくれる博士はいい人だ

すっかり雨は上がり当初の目的も達成されたわけで、いくら体内時計が狂ってももうそろそろ帰って再び夕飯をと考える
日課であるレイの散歩もそんなこんなでできてないのでやるべきことはいっぱいだ



―――



家に帰ると家の前に車が一台止まっていた。一昨日に乗ったその車で家に理人くんが来ているのだとすぐに分かる
玄関を開けてただいまと声を出せば、リビングからおかえりという声とともに理人くんとレイが姿を見せたのだ


「それで理人くん、今日はどうかしたの?」
「特にどうもしないよ。あえて言うなら凛音に会いたくて来ただけ。今日は一緒に夕飯たべるか」
「来てくれて嬉しいし、一緒にご飯も嬉しいよ。でもやっぱり」

言う相手間違ってると思うんだよね‥そう呟けば、そんなことはないと否定されスキンシップが始まるわけで、それをなんとか阻止し一緒にご飯作ろうと提案をすれば乗ってくれる
二人でキッチンに立ってみれば、俺たち新婚さんかななんて冗談いってて手に負えない

「そんな冗談いうなら彼女作って結婚すればいいのに‥高校の時は彼女いたのに、なんで今居ないの?」
「結婚願望はないよ。それに彼女居たら夢かなわないと思うからかな」

それに俺が結婚したら凛音は寂しいだろーなんていいながら、流石に調理中は危ないためスキンシップは控えてくれる。野菜を切る動作も手慣れたものだ。
顔はイケメン部類で頭も良くて家事もできる、職業は警察勤務で実家が資産家の家業あり。対人能力も高めついでにエスコートも完璧だ。
欠点といえばシスコンと若干のナルシストいうことあるがそれでもを差し引いても優良物件なのではないかと思う。

「‥そういえば理人くんの夢ってなに?」
「凛音は覚えてない?」

そういうと彼は私の耳元で、俺が守るから大丈夫っていう約束。それを守ることが夢だよ。そう囁いた
まるで好きな子を口説き落とすときに用いるような技を使ってくる辺り、いくらなんでもシスコンをこじらせすぎているのではないだろうか、そう考えずにはいられない。

「覚えているし、ありがとっていいたかったけど、その行動は妹にすることじゃない‥。」

「兄にされてそんなに照れるくらい男慣れしてないんだと他のやつにされたらイチコロだろって心配になって、耐性をつけさせようかと思ったんだけどな」

ほら俺一応イケメンらしいしなんて再びのナルシスト発言に更に頭を抱えたくなりながらも夕飯のために手は動かすのだった
兄は兄でも、前世以下略のせいで兄だと認識できてないが故というところもあるが、顔がいい人にそんなことをされていくら兄だと思っていても恥ずかしさや照れがあると理人くんは理解してくれない
まず理人くんがしてくるようなことを平気でしてくる人がいる事を考えたくない。いるとしたらその人も理人くんもう少しパーソナルスペースを考えるべきだと思う

どうしたものかと考えても埒が明かないもので、夕飯を作る手が重くなる。考えるのをやめて息抜きしたいと思えばやり残したことを思い出した

「ごめんそういえばレイの散歩してなかったから、ちょっと10分位でてくるね」

いってらっしゃい気をつけてという理人くんの返事を耳にして私はキッチンを飛び出した



―――




「またレイか‥」

その言葉とともにため息をつきそうになるのを飲み込んで、それでも凛音が戻ってくるまでに完成させようと手を動かした


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