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15
マクギリスは、自身の執務室へと私を連れて行った。
もともとこちらの世界の彼が嫉妬しやすいタイプなのは知っていたが、石動に対してもああなってしまうのだろうか。
執務室の応接用ソファの上にゆっくりと私を座らせ、マクギリスも向かい合うようにしゃがんで、目線を合わせる。
先ほどまでの怒ったような表情はだいぶ消えて、普段の穏やかな彼に戻っているように見えたので心なしか安心した。
「昨日は、帰ってこないから、心配したんだ」
「……すみません。目が覚めたらもう夜だったので……。それで、とりあえず夕食だけは、と思って食堂で食べて……」
「帰ろうとしたんだね」
「はい。そうしたら、ぐらっと倒れそうになったところを、石動さんが助けてくださって。それで、あの部屋に」
「そうか。まあ、何かあった訳でなくてよかった」
満足そうに頷くと、ゆっくりと私に向かって腕を伸ばし、包み込む。その大きな身体にすっぽりとおさまり、彼の温もりを感じながら目を閉じた。とても安心した。
軍服から、彼の香水の匂いがした。それはいつも愛用しているもので、甘い、どちらかといえば女性が好みそうな匂いのものだった。マクギリスの腕の中で、だんだんと心地よくなってきて、どうしようかなと思い始めた頃、すっと温もりが離れて、代わりに髪にキスをくれた。
「大切な、私のアーネ」
エメラルドに輝く彼の瞳が柔らかな光に揺れる。吸い込まれそうだ。
「今日は今から、宇宙へ上がって任務をしなくてはならないんだ。だから、アーネは私が帰るまでしばらく、家でゆっくりするといい」
「はい、そうします。帰ってくるの、待ってます」
「ああ」
そう言ってマクギリスは、くちびるに優しいキスを落としてから私を見送った。
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マクギリスのいないマクギリスの邸宅は、ただただ広くて、そして何より、何もすることがなくて暇だった。
だからこそひたすら眠ってやったし、部屋の掃除もしてみたりしたし、広い広い庭でひなたぼっこをしながら空を見上げてみたりもした。本当に暇だった。
しかも完全にひとりではなく、使用人さんがついているので、完全な自由もなく、料理を作ろうとしても止められる始末だ。ひとりだと、とても住みにくい。せめてマクギリスがいれば、と。
「こんなに暇なら、元の世界に戻れればいいのに」
はあ、と溜息をついても何も変わらないことは自分がいちばんわかっていた。あれだけ眠ったのに一度も戻れなかったことも不思議だった。行き来出来る条件があったりするものなのだろうか。
いや、悩んでも仕方ない。
今日も陽が暮れる。
マクギリスも、石動も、帰ってくるまでまだ数日ある。せめてどちらかに会えれば、と。知り合いがいないというのは、こんなにも心細いものなのか。
自室として借りている部屋のソファに横になって、私は考える。
マクギリスに会いたい。石動にも会いたい。
好きなんだ、彼らが。純粋に、好きだ。
そう思うとどうしようもなく胸が締め付けられて、たまらず唇を噛んだ。しかし血が出るより先に、涙が出ていた。