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03


「痛……っ」

マクギリス(のような男性)の、すぐそばに控えていた男性に手当をしてもらった。腕に触れると想像以上の痛さに顔を歪めてしまうほど、思っていたよりきつく掴まれていたらしい。よく見ると内出血していた。
しかし、今はとてもそれどころじゃなかった。

私は何歳なんだろう?ふと考える。
ここではない世界の年齢である歳のままなのか?それとも若くなっているのか、もしくは歳を取ってるのか…?
そしてこの制服。自分も青い色の服を纏っていることに気づき、何かの組織だろうか、と目前に立つふたりの男性を交互に見た。
金髪の彼と、茶髪の彼。自分は茶髪の男性とほとんど同じ格好をしていた。マクギリス、と思われる男性は少しだけ豪華な装飾のものを身につけて。

「名前は?」

「……アーネ・ヨンセン、と申します」

「アーネか。改めて、私はマクギリス・ファリド。階級は准将だ」

「マクギリス……さん」

復唱するとマクギリスはにやりと笑った。やっぱりそうだ。正真正銘、同じ人。しかしこの世界の彼は、全くの別人のようだった。

「隣にいるのは石動・カミーチェ。私の部下だ」

マクギリスに紹介されぺこりと頭を下げる石動に頭を下げ返し、私はもう一度マクギリスを見据えた。

「所属と、階級は?」

「……それが、わからなくて」

「……覚えていないのか?」

「……はい」

マクギリスは顎に手を当てて考え事をするポーズをとる。
どことなく……、出会った頃のようなこの感じがとても初々しい。

「あの、ひとつお聞きしたいのですが」

「何だ?」

「今、西暦何年ですか?」

「……西暦?」

マクギリスも、石動も、共に首を傾げて私を見る。何かおかしなことを言っただろうか。私の心中を察してか、石動が答えてくれる。

「現在は、Post Disaster 325年、だが」

「え?」

Post Disaster?
西暦ではない、というのはどういうことなんだろう?
それに、この環境も、私がいた世界とは違いすぎる。本当に、一体ここはどこなのだろう。

分からないけれど、とりあえずこの建物内を回ってみたら何か見つかるかもしれない。そう思い、腰掛けていたソファから立ち上がる。

「そうですか……。いろいろとありがとうございました。御迷惑をお掛けしてしまい申し訳ありませんでした。……では、失礼しますね」

早く元の世界へ帰りたい……そんな思いが胸をよぎる。それにこれ以上彼らに迷惑をかけるわけにもいかないと、歩き出そうとしたときだった。

足首にも鋭い痛みが走る。

「……やはりな、足も痛めていたか」

マクギリスが言い、救急箱を持つ石動に手当を、と合図したらしく、痛みで衝動的にしゃがみ込んでしまった私に、石動が駆け寄り「大丈夫か」と声を掛けてくれた。

「何度も、すみません」

「構わない。気にするな」

「……ありがとうございます」

私のブーツを脱がせ、テキパキと手際よく足首に湿布と包帯を巻く彼にしばらく見入ってしまう。
淡々と話すあたり、なんとなくきつい人だと思ってしまったが、その目はとてもやさしい目をしていることに気づいた。

「何か?」

「あ、いえ。すみません」

目が合ってしまって、ほんの少し気まずくなった。



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結局、腕も足も包帯で巻かれていて、大怪我をしたみたいになってしまった。
まあ実際、痛むには痛む。

「すまないが、私はこれから会議の予定があってな。もし困っているようなら、石動と居てくれないか」

「え、石動さんと、ですか?」

この世界のマクギリスはどうやら多忙らしい。そして部下の石動さん、はそのマクギリスのスケジュール管理やらも含め、お付きの副官をやっているらしいことまではわかった。
だが、未だにここがどんな組織なのかがわからぬまま。しかし階級制度があることから普通の会社でないことは察した。

「了解しました」

表情を変えずに石動は返事をし、デスクの椅子から立ち上がったマクギリスの後をついていこうと歩き出す。そのときに私の方をちら、と見るなり、「少し待っていてくれ」と告げて部屋を出て行った。




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