案内されるままに着いていくと、昨日の部屋に到着した。ダイニングとして使われているのだろうか、とも思ったが、食事を取るには余りに勝手の悪い高さのテーブルに、即席で並べられた感じが否めない(だけど美味しそうで素敵な)料理を見て、その発想は消し飛んだ。

「わあ、すごい」
「散らかっていてすみませんが」

そう取って付けたように、(たいしてそんなことも思ってなさそうに)竜崎さんが言って、そのまま私の向かいに着席した。
確かに、このローテーブルの左右には、素敵な料理が不釣り合いに見えるほど、ファイルや書類などが山積みにされていた。

が、生憎そんなことを気にする性分でも立場でもない。そのまま一通り感謝を述べて、わたりさんが此方にどうぞと示してくれた広いソファに座る。

「お口に合えば幸いです」
わたりさんはそう言ってから、軽く礼をして足早に下がっていってしまった。

「…わたりさんは、一緒に召し上がらないんですか?」
「そうですね。あまりそういうことはありません」

そういう竜崎さんも食事を取ろうという気がなさそうだ。先程から自分の座っている三人掛けソファに書類を広げて、つまらなそうに眺めている。

「竜崎さんも、食べないんですか?」
たまらず訊くと、ちらと目だけ此方に向く。
「ワタリが直ぐに持ってきてくれるので。もふさんは先に召し上がってください」

ここでの食事システムが全く飲み込めないが、そう言われてしまえば従う他はない。わかりましたあ、と気の抜けた返事をして、いただきますをして、お料理に手を付けた。

「ひええええ!」
「…どうかしましたか」
「あ!すみません、これ美味しくて…!」
「…そうですか」
「はい、本当に美味しいですね、これ…」

見た目も素晴らしい何て言うお料理なのかさっぱり分からないそれを食べてそう言うと、竜崎さんは若干冷ややかにそれは良かったですねと薄く口を動かした。
手に持った紙切れにしか向いていない視線は、わたりさんがこれまたきらきらと輝く綺麗なデザートを持ってきても動かなかった。

「竜崎さんって、もしかして物を食べないんですか?」
「…食べますよ」
もしかしたら油と電気とかで動いてるのかもしれない、と何故だか思えてしまったけど、よかった。ちゃんとした人間みたいだ。

くしゃっと紙を床に放り投げて、ようやく彼は目の前のテーブルに向かった。そして、先程運び込まれてきた綺麗な洋菓子類を乱暴に口に入れ始める。
それにしても、ご飯は食べないでデザートだけ食べるなんて。まあ見た目からしてあまり常識は通じなさそうだし、気にしないでおこう、と私の脳みそが判断する。
ぱくぱくと食べ尽くされていく目の前の甘いものたち。へえ、掃除機みたい。面白いなと思う私は自分の分をきちんと食べ終わったので、竜崎の人間掃除機っぷりを観察する。ああ、観察するうちに気になることが一つ。

「……飽きないんですか?」
「何にですか?」
「その、甘いものばっかり食べてるから。たまにはしょっぱいものとか、食べたくなりません?」
「ならないですね。やはり糖分が一番です」

何の一番なのかは釈然としないけれど、綺麗な甘いものを気持ち良いくらいに食べる彼を見ると、なんだか突っ込んで訊くのも野暮な気がしてくるのだった。





 




-Suichu Moratorium-