少しずつ、つっかえながらゆっくりと言葉を紡ぐ。
「……日本は、マグルと密接な関係を保ちつつ生きてるの。今は魔法が使えるのは秘密なんだけどね。遥か昔は、日本妖怪や陰陽師は隠れる事無く生きていたのだけど、その時代には、アベノセイメイっていう偉大でとても強い陰陽師がいたの」
「あ、知ってる!日本の魔法使いといえばアベノセイメイだよな」
フレッドの相槌に頷く。
日本でも陰陽師=安倍晴明というイメージだろう。
「マホウトコロはね、悲しい事だけれど、スリザリンがほとんどをしめているような所で。家柄でカーストがあるの。アベノセイメイの血を継いでいる中でも、宗家が最も偉く、次に血の濃さとかで決まる。全くアベノセイメイの血が入っていない子やマグル出身の子達は虐げられたりもするわ」
その言葉に3人は痛ましげに目を見合わせた。
私は、乾いた唇を一舐めし、話を続ける。
「……私は、アベノセイメイの血が少しだけ流れているけど、あまり濃い方ではないし、母はマグル出身なの。でも、別にカーストにも興味はないし、両親を恥じた事はなかったから、どうでもよかった」
「でもある日、我が家と指して変わらぬ家柄の女の子が、母を、口にしたくもない言葉で侮辱したの。その…あまり可愛げのあるやり方ではないけれど、それでも受け流そうとはしたのよ」
薪の爆ぜる音と、私の声だけが響く。
「でも、頭に血が上っていたものだから…もちろん、相手はそんなのを許さなくて。私の頬を打ったの。髪の毛を引っ張りあったり、倒れ込んでも殴りあったりして……。周りに引き離された頃にはお互いボロボロだったわ」
この後に続くあの悲劇を思い出し体が震えた。
彼女の悲鳴が、今でも耳の奥で聞こえる。
「でも、引き離された後、あの子は苦し紛れに攻撃呪文を放ったの。私は、咄嗟に結界で防いだけど。けど……弾かれた呪文が止めに入っていた女の子に当たってっしまったのよ。彼女の細い体が吹き飛ばされて、頼りない首筋がのけぞったのをよく覚えてるわ」
そう、あの頼りない首筋の白さ。
飛び散る硝子のキラキラとした輝き。
タタッと軽い音を立てて落ちるルビーのような赤。
それは今でも、私を責めたてる。
まるで逃げる事は許さない、とでも言うかのように。
泣く資格などないのに、あの日を思い出すと堪えきれなかった涙が落ちる。
黙って聞いている皆の顔を見るのが怖く、すっかりと冷えたココアだけを見つめていた。
「床に崩れ落ちた彼女は、少し痙攣した後に、頭を緩く上げて……。その美しい黒髪が床に落ちたままなのに気づき、甲高い悲鳴を上げたの」
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