「なぁ、アキカ……その子は怪我してたんだよな?なんで、髪の毛の方に反応したんだ?」
ジョージが訳が分からない、といった顔で呟く。
他のみんなも程度はあれど怪訝な顔をしている。
「日本の、古くからの陰陽師や巫女の家系はね、髪や何処かに霊力−こちらでは魔力と言うらしいけど。霊力を溜める秘術を代々受け継いでいるの。彼女は、巫女の、しかも神降ろしの家系の子だったわ。そして……」
ゴクリと息を飲む音が嫌に耳につく。
「彼女は、髪に霊力を溜めていたの。魔法で髪を戻せても、霊力は戻せない」
そんな、まさか……、と小さな悲鳴じみた声が隣から零れる。
アンジェリーナを見ると「スクイブ」と音も無く、唇が動く。
「ああ、ごめん、スクイブにはならないよ?でも、また同じ量の霊力が溜まるまで、すごく時間が掛かるの。すっかり弱ってしまった彼女は、私達2人を見たくもないと、引こもるようになってしまったのよ。本当は学校から追い出したいほど、恨んでいたんだと思う」
「学校側もそこそこの家柄同士の諍いで、退学にする事も出来ず、対処に困ったんでしょうね。たまたま来ていた交換留学生の話にこれ幸いと、私に振ってきたわ。両親は、私を責めはしなかったけれど、それが逆に辛かった。だから、だから、私は全てから逃げ出したのよ」
静かな談話室。
私の嗚咽だけが唯一の音。
いつの間にか消えてしまった暖炉は、誰もつけ直さない。
静まり返るその空気や誰も言葉を発さないことが怖い。
軽蔑、されてしまっただろうか。
やっぱり、私がホグワーツでやり直すなんて虫が良すぎたんだろうか。
「「ジャパニーズは、きちんとしてるんじゃないのかい!?」」
突然、フレッドとジョージがハモりながら大声を上げた。
その勢いと予想外の言葉に困惑しながら顔を上げると、4人は誰一人として冷たい目をしていない。
逆に、暖かい目をしていた。
「だって、魔力を溜めてるんだろ?」
「伸びてきても切れないだろ?」
「「そんなの不揃いになるじゃないか!アキカはいつもきちんとしてるから、ヤマトナデシコは!まだ滅んでいないと!思ってたのに!」」
そんなのってあんまりだー!と騒ぐ2人。
ぶふっ、とアリシアが吹き出す。
「ほらみなさい。ヤマトナデシコなんていないって言ったでしょ?全く、男子って馬鹿じゃないの。ヤマトナデシコ、ブシ、ニンジャとか騒いじゃって」
アンジェリーナが呆れたように言う。
それに「ジャパンには夢が詰まってるんだ!」などと反論する2人。
そんないつもの掛け合いを見ていると、いつの間にか涙は止まり、笑いがこみ上げてきた。
「あっはは!いくら霊力を溜めてるって言っても揃えるくらいはするわ!それにブシって!時代錯誤もいいところじゃない!」
「アキカ!ニンジャは!?ニンジャはいないのか!?」
「今の時代におりません」
バッサリと切り返すと、2人は本当に信じていたのだろう。
ショックを隠しきれない顔で俯いた。
その姿すら面白くて、しばらく女3人で笑い続ける。
ふと肩に回ってきた腕。
アンジェリーナを見ると、優しい姉のような穏やかな笑みを浮かべていた。
「……よく頑張ったわね」
その一言に他のみんなも頷く。
ただ、それだけなのに今まで張り詰めていた何かが切れる音がした。
ぼたぼた、と大粒の涙が零れ落ちた。
肩にあった腕が私の頭を抱き寄せる。
アリシアの背中を摩る手や、アンジェリーナの暖かさを感じながら私は子供のように、いつまでも泣き続けていた。
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