まるで綿菓子を初めて食べた時の様な至極幸せな夢をみた。
ルームメイト達が起き出す音で目が覚めてからも、しばらく余韻を味わうほどに。
「アキカ!先行くからね!」
アンジーの少し苛立った声に一気に現実に戻される。
体を起こすと扉が大きな音を立てて閉まるところだった。
「寝坊だ!」
即座に理解した途端大声を上げていた。
やばいやばいやばい。
お母様から貰った桃の木の櫛で髪をすけば、軽く跳ねていた寝癖もすっと収まる。
いつもは上手く行かないスカーフもすんなりと結べ、まだベットが暖かい内に用意が出来た。
けれど、昼まで朝ごはん抜きではキツすぎる。
昨日のうちに用意しておいた教科書類を持って、階段を掛け降りる。
談話室には早めに朝食を終わらせた子達が、授業までの時間を各々の形で潰していた。
「おはよう、カドクラ」
誰が声を掛けてくれたかを見ることも出来ぬまま、「おはよう!」と言いながら談話室を突っ切る。
マホウトコロの先生方が見たら怒りを通り越して、倒れるんじゃないかと思うほど行儀が悪い。
分かってる、分かってるけど、朝ごはんが今一番大事!
自分の中で言い訳をしながら大広間まで走り抜けた。
教授達に遭遇しなくて本当によかった。
そんな事を思いながら大広間を見渡すと、手前の方にハーマイオニーがおり、1人黙々とパンを口に運んでいた。
「おはよう、ハーマイオニー!」
ちょうど空いていた隣の席に滑り込むように座ると、ハーマイオニーの肩がびくりと跳ねた。
いきなりだったから驚かしちゃったかな。
「おはよう、えっと、カドクラ?」
「アキカでいいよ」
白くフカフカなパンを千切り、たっぷりと蜂蜜を掛ける。
もちろん、サラダも食べるけど蜂蜜たっぷりのパンが最近のマイブーム。
日本にいた頃は、なかなかパンを食べる事は無かったし、なによりもホグワーツの蜂蜜は香り高く美味しい。
「アキカ、私ね、ニホンに凄く興味があるの。ニホンゴの勉強もしたいと思ってるんだけど、難しくて……」
「日本人の私も日本語は難しいと思う時があるわ。私で役に立てるか分からないけど、手伝いましょうか?」
「本当!?」
私より少しだけ身長が低いハーマイオニーが上目遣いでこちらを見る。
期待に満ちた目や整った顔立ちに、男の子ならイチコロかなと一瞬過ぎった。
「ええ。そうね、今日ちょうど手紙を出そうと思ってたし、ついでにお母様にドリルとか見繕ってもらうわ。お母様のセンスは素晴らしいのよ」
「ありがとう!!」
花が綻ぶように笑うハーマイオニーが可愛くて、思わず抱き締めたくなる。
妹がいたならば、こんな子が欲しい。
「私ね、ハーマイオニー。貴方と仲良くなりたいと思ってたのよ」
照れ臭そうだが、嬉しそう微笑みながらサラダもつつくハーマイオニーの髪をそっと撫でる。
ゆっくりと流し込んだ紅茶は、溶かし込んだ薔薇のジャムのお陰で花を飲んでいるかのように香り高かった。
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