参戦
予定よりは1日早いけど、やる事はないしお土産を買って帰る事にした。新開君は質より量だよね、あの歳になりながらも食べる新開君を見ていると中高校生のようだ。
午後新幹線と電車に揺られ、最寄駅から荷物を引きながらアパートに着く。
「ただいまー…」
…新開君はバイトか?靴はないみたいだ。人気のない部屋に入る。
…。
なんだこの状況は…部屋に入った瞬間思わず立ち尽くす。私が居ない間に何があったのか、泥棒でも入られたのか。キッチンの流しには使いっぱなしのフライパンが突っ込んであるし、お皿も溜まっていたり、コンビニのお弁当の殻がローテーブルの上に放ったらかしだったり、物は散らばっているし…。
なんていうか予想通りっちゃ、その通りだ。
その瞬間、ガシャッと戸の開く音がする。
「っなまえさん!?」
焦ったような新開君が廊下との境の引き戸を開けて顔をだした。
「っ」
思わず、数日前の作業の事を思い出してしまい新開君から逸らすように部屋を見渡す。
「っ、これどういう状況?」
「えー…となまえさん明日帰る言ってたからな!今日これから片付ける予定だったんだ」
少し焦る声が背後から聞こえる。
「はぁ…着替えてくる」
「ぉ、おう」
ピシャッと戸を閉める。
…ぅわぁーー!私のバカ!なんであの時新開君思い出してしたのよ!思わずベッドにのたうち回った。
「…なまえさんすげぇ音するけど大丈夫か?」
引き戸の向こうの新開君の声にビクッとする。
「っ大丈夫です!」
うう…、最近男性が近くに居なかったせいだ、本当一時の気の迷いだから!忘れろ自分。そんな暗示をかけながら部屋着に袖を通した。
「…はぁ、片付けるよ」
「おお、散らかして悪かったな」
頭を真っさらにして、少しは反省しているらしい新開君とゴミを拾い、片付ける。
「こっちは燃えないゴミで、そっちが燃えるゴミだから」
「めんどうだよな、燃やそうと思えば燃えるよな」
分かる分かるよその気持ちは。燃えないって何よ、燃えるでしょっと同意するけど、決まりっていうもんがあるからね…。
「なまえさん怒っているのか?」
片付けながら新開君が様子を伺う様に口を開く。
「いや、こんなんで怒りはしないから」
呆れているだけだ。…というか予想はついていたし。
あとはキッチンか…汚れ物を洗おうとするのでエプロンを着けようとする。…が掛けてあったところにない。
「新開君?エプロン使った?」
「っ!悪い、洗濯する時に少なかったから、タオルやら入れたんだ!」
「ああ、そう。ありがとう」
確かに手拭きタオルも新しくなっている。
こびりついた油汚れを落として綺麗にする…あー、せめて水に浸けといてくれれば楽だったのに。そして冷蔵庫の中身を確認する。…もう当初の約束事の冷蔵庫の中身を勝手に食べないという約束はないと思っている。まずこの無尽蔵の胃袋をもつ新開君には無理だ。
すっごい…見事に空だ、買い足さないとな。というかあの腕で料理したのか。
「また、よく食べたね」
私の声に釣られてか新開君が寄って来る。
「まぁな。今日の夕飯何にする?」
「それは私の台詞、何が良いの?」
「豚丼だな」
「はいはい」
時刻を見ると4時だ。
「ヤバイタイムセール始まる!買い物行ってくるから」
「お、じゃぁ付き合うぞ」
「え、うん分かった」
私のご機嫌とりなのか珍しく荷物持ちをしてくれるらしい。
お陰でカゴなしで手ぶらに4時半からのタイムセールに参戦できた。激安の肉やらを買い込む、一部は冷凍だ。じゃないと新開君と住んでいると食費が半端ないのだ。
「…ごめん、買い過ぎて」
2人で両手に買物袋を持ってアパートに夕日の中戻ろうとする。つい、持ち手があるならと思い色々買い込んだ。
「いや…ククッなまえさん最高だ…、似合ってた…いやカッコよかったぜ?おばちゃんの波を颯爽にかき分けていく姿…」
隣を歩きながら震える新開君。
「…っ誰のせいだと思ってるのよ 、食費抑えようと…さぁ」
「ああ、分かってる。いつもありがとうな」
涙を堪えながら、感謝の言葉を言ってくれる優しい笑顔の新開君に次に繋がる文句も出て来なかった。く、良い顔浮かべて全く…。
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