風邪のせい


風邪引いて休む為に寝たはずが目が覚めるといつものベットじゃなかった。思わず辺りを見渡す。

「…?」
「起きたか?」

そんなボーッとしているらしい私を新開君が少し心配そうに覗き込んでくる。ああ、これは新開君の布団か…。

「…ん、身体が痛い」
「熱あるからな、ホラ」

体温計を渡されて脇にセットして数十秒、ピピッと鳴った。

「…あるね」
「そうだな38.2か、大人にはつらい体温だな。あ、なまえさんお粥作ったんだ食うか?しっかり味は確認してあるからな」

その言葉に途端に不安になる私。
お粥で毒殺とかやめて欲しいんだけど…。頭の中では失礼極まりないのだが、正直ありがたかった。

「じゃ…食べます」
「ああ、用意するな。イイコで待ってろよ」

頭にポスンと大きい手を置かれて、新開君は鼻歌まじりにキッチンに行く。そして火にかけてお粥を温めているようだ。
…が、しかし私の熱があんたのせいで上がりそうだ、どうしたものか…。でも1人で居るより断然心強い。ああ、絆されてるなぁ…私も。



「温めたぞ〜、食べれそうか?」

目の前に持ってこられたお粥は、野菜まで刻んで入っていてなんとも美味しそうだった。

「ぇ…これ新開君が?」
「っ、バイト先で教えて貰ったから大丈夫だからな」

顔色一つ変えないでテキパキと用意する新開。長くなってきていた髪を一つに縛りながらそう動く新開君を見てたら、いつしかのバイトの姿を思い出す。

「…美味しそ…」
「そう思えるなら早く治るぞ」
「ん」

スプーンをもって息で冷ましながら食べる私。確かに問題なく食べれる…死ぬことはないだろう。

「美味しい、本当ごめんね」
「ああ、良かった。そして"ごめん"じゃなく"ありがとう"だろ?」

飄々と言い放つ新開君。それを見ながらゴクンとおかゆを飲み込む。なんて言うかこの人はモテるのだろうと確信出来る瞬間だった。
色々残念な部分はあるがこう言う所は凄く魅力的だと思ってしまう。

「…ありがとう新開君」
「ああ」

食べ終わったお皿を新開君が片付けてくれた。そして、手際よく薬やら栄養ドリンクを用意して飲ませてくれる、額に冷えピ○まで張ってくれる。薬も飲んだし熱もこれで下がるだろう。

「…新開君、モテそうだね」

つい思ったことを言った私。

「なんだ?やっと気付いたか?」
「…調子のんな」
「ははっ元気出てきたな。ここに居てやるから、目を閉じて休め、な」
「ん」

さりげなく手を握られてどこか安心感がある。その硬い男らしい手を解かないというのは、きっと私が弱っているからであろう。





次起きた時には部屋は薄暗くなっていた。そして目の前は服?新開君が私の手を握りながら添い寝する形で昼寝していた。

あぁ…私は人恋しいのだろう、いやそういう事にしよう。自ら新開君に擦り寄り、懐に入るかの様に目を閉じる。新開君の匂いと逞しそうな身体が凄く安心する。新開君がそれに反応するのか無意識にかモゾモゾと私を抱きしめてくる。
歳下に甘えるとかどうなのよとか思いつつも甘えてしまった私だった。


15分程腕の中でウトウトしていたら新開君がモゾモゾ動くので、つられて目を開ける。あ、そうだ…私目を覚ました時を考えてなかった。

「…ぁ…しん、かい、君」
「ぁ!ああ」

目の前の新開君が私を抱きしめながら少し焦っている。そして離れようと距離が開き、一気に寒くなり物足りなくなる私の身体。
思わず新開君の胸元の服をギュッと掴んで引き止めた。

「…あの、も、少し…だけ、あの、寒い…」

その割には手が震える。

「〜っ!ああ、風邪引いてるからな」
「そ、そう」

そうして私を寝ながらまた抱きしめてくれる新開君。先程より強く抱くせいか胸がキュウっと締め付けられる様で痛くないのに痛く感じる。おかしすぎるこの状況、全ては風邪のせいだろう。

「…あ、ども。ごめんね」
「ああ」

新開君が離れると同時に薄いタオルケットを頭まで被る、なんしろ恥ずかしくて顔なんて見れる訳がない。その時タオル越しに顔に圧迫感を感じた。

「ん、…なに?」
「いや、何も」


夕飯はお昼の残りらしいお粥を風邪のせいで真っ赤なまま食べた。

「よし、身体でも拭いてやろうか?」
「っ!それは結構です!」


新開君の献身的な看病のせいか翌日にはほぼ復活した私だった。
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