振り出し


色々と関係を振り出しに戻さないといけない。そう思ったのは皿洗いをしていた時だ、そう、最初に割った皿の事だった。というよりも俺がなまえさんと一緒に出掛けたかっただけだが。

その週、朝から眼福だったが、このままだと俺の理性が危ないので指摘することにした。
暑い時期に入り部屋着と寝間着がショートパンツとタンクトップやらTシャツになったなまえさんを下から見ているとパンツがチラ見出来ていた。いい歳してそれに興奮するっていう俺はきっと若いのだろう。

出掛けるとなって、調子に乗って服まで選んだ。その上ネックレスを付けるとかでわざわざ接近するとなまえさんがガチ照れしていて堪らなかった。そんななまえさんを外に連れ出した。カーディガンなしでも良かったがなまえさんのノースリワンピースを他の野郎に晒すのも嫌だったからな。
そして出掛けるのが満更でもなさそうななまえさんにこちらのテンションが上がる。つーか、愛が止まらな過ぎておかしくなりそうだ。

気ままに久しぶりの水族館まで連れてきた。そう楽しんでいるなまえさんは正直25に見えなくてこう…グッときた。この楽しんでいる顔は俺にしか分からないだろうな。そしてどうにかなまえさんに今日を忘れて欲しくない女々しい俺はお土産を渡した。
ブレスレットが揺れる細い手首を掴んで立ち上がらせて水族館を後にする。






「あの、新開君ありがとう

俺の様子を控えめに伺いながらお礼を言ってくる。

「…こーいう時のお礼はちゅーじゃないのか?」
「バッカじゃないの?」

途端ムッとする。ああ、それでこそなまえさんだ。しおらしいなまえさんも悪くないけど、寧ろいいけど俺が保てない。

「帰るか」
「そうだね、夕飯何にしようかって食べれるの?昼結構食べてたけど」
「当たり前だろ?おめさんの料理は別腹だ」
「あのねぇ…もう、本当よく言う」

髪をときながら困っているなまえさんも嫌いじゃない。


「あ、スーパー寄ってくから先帰ってて」

スーパー近くになってそう言ってくれるが…このままだったら普通は一緒に行くに決まってるだろう。変なところで俺に遠慮があるなまえさんだ。
もちろん、スーパーに付き合う。

「カツ丼で良いぞ、カツも買ったので良い」
「また重いもんを…まぁ良いやそれなら簡単だし」

スーパーのカゴにポイポイと食材を入れていく。

「っ!新開君、そんなに菓子パン入れないで!太る」
「いやぁ、俺が基本食べるんだからいいだろ?」
「新開君が食べてると美味しそうに見えるのよ」
「じゃ、俺の一口やるから」
「えー…」

なまえさんはウダウダ言うが結局はカゴに入れたままで菓子パンがレジを通る事となる。そうやはりなんだかんだで優しいんだ。

「…なまえさん大好きだ」
「ハイハイ」

いや、本心なんだけどな。どうにも伝わらない様だ、なんでだろうか。









アパートに帰ってから5千円札を渡される俺。いや、意味が分からない。

「…新開君全部払ってくれたでしょ?今日一日中」

そりゃまぁ俺にとってはデートのつもりだったしな。

「そう言うの嫌なの。しっかり払わせて、足りないなら言って」

表向きは俺を立たせてくれたのか、なんともなまえさんらしい。だからそのお札は素直に受け取った。

「…また欲しいもんあったら付き合って欲しいから、よろしくな」
「ふん、勝手に連れていくくせに」

腰に手を当てドヤ顔のなまえさん、本当よくご存知で、愛してるぞ。


なまえさんが自室に着替えにいった様子だから俺も着替える。やはり、家ではすぐラフになりたい。今日はなまえさんとのデートだから気合入れたしな。
時計やらを外していた所為で、着替えるのはなまえさんの方が早かったらしい。ガラッと戸が開いたと同時に閉じられた。うーん、困ったな…頭を掻く俺。

「なまえさーん?何面白いことしてるんだ?」
「…別に」

そりゃ俺ボクサーパンツ一枚だったしな。しょうがないから取り敢えず下は薄いジャージ履いて戸をコンコンとノックする俺。

「なまえさんもう大丈夫だからー」

じゃないと襲っちまうぞ?と続きたいが本心過ぎてさすがに口から出てこない。
ガラッと開いてなまえさんが眉を寄った顔を出す。

「っ!上も着ろ変態」
「いやぁ、まだエアコン効いてなくて暑いからな」

真顔な顔を俺から背けながらキッチンでエプロンをつけ始めるなまえさんに半裸で近付く。

「な、何!?」

するとビクつくなまえさん。うーん…なまえさんのこのとって食ってくれ的な反応すげぇ好きだ。
そうこの人、コタツで足がぶつかるとかちょっとお皿の受け渡しに指触れるくらいでも可愛らしい反応してくれるのだ。それを分かってから止めないどころか、敢えてそうする俺も大概だったな。

「何だ?俺を意識してるのか?」

少しだけ冷蔵庫追いやり見下ろす、すると真下から少し頬を染めてジッと睨んでくる。

「っ、するわけないでしょ」

あー…本当良いこの反応、ゾクゾクする。ぁ…タンクトップから覗き込めば胸見えそ…これは指摘しないでおこう。意識しててもしてなくてももっと俺の事を気にしてもらわないと話にならない。

「ああ、俺暑いと半裸だからな。よろしくな」
「は!?」
「なんだ?全裸が良かったか?」
「出てけ変態」
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