誕生日の続き


誕生日の翌日、マッサージ以降の記憶が無くなっていた。それに気付くと同時に身体に寒気がはしった。そして思うように体が動かねぇ。

「はい、それ風邪ですね新開君。今日休みなね、明日土曜だから丁度良かったんじゃない?」
「おぅ…そうだな」

出勤前のなまえさんが呆れながらタオルケットに包まれている俺の額に手を乗せてくる。ヒヤッとして気持ちが良い。

「朝は用意してあるけど、昼はゴメン。病院行ける?近くにクリニックあるから」
「ああ、悪いななまえさん」
「本当…子どもみたいだね」

少しは心配してくれながら控えめにクスクスと笑いながら、出勤していった。

「はぁ…」

情けねぇ…。誕生日にはしゃいで翌日風邪とかこれじゃ子供じゃないか…そりゃなまえさんも呆れながら笑うわ。俺も笑いてぇもん。



9時前になって、適当な服に着替え重い身体を引きづりながら近くのクリニックへ行ったら夏風邪だという。まぁそうであろう…薬を処方してもらいアパートに帰った。

あー…だるいな。たまには風邪ひきたいとか思ったのはどこのどいつだ、やはり風邪はひかないほうがいいに決まってるじゃないか。
ブランケット2枚に包まり浅い眠りを繰り返した。





腹時計的に目を覚ますといい匂い。

「あ、起きた?」
「…なんで…」

目を覚まして体を起こしたらマスクをかけ、軽く髪を上げたなまえさんが居た。

「…前…の時、助かったし、誕生日の続き、してあげるから」
「…」

俺から目線を外しながらマスクいじるなまえさん。気まずそうに言うその台詞に再度ベットにダウンした俺。
え、なまえさん午後半取ったのか?俺の為に?マジで?回らない頭で喜びを噛みしめながらタオルケットを抱えて悶える。

イキナリ横になった俺を不思議に思ったのか様子を見に来てくれた。

「ちょ、顔真っ赤じゃん!熱測った!?」

なまえさんが焦って体温計を渡してくる。…いや、これなまえさんのせいも含んでいるんだって。

「解熱剤は!?」
「ぇ、食ったら…」
「じゃ、ちょっと待ってて昼作ってあるから」

怠い俺の目の前に出される、胃に優しそうな料理の数々。

「…ごめん、作り過ぎた?」
「いや、食欲は…ある」

そうとホッとするなまえさんを思わず抱き締めようとするが、諌めた俺。もう…あいつらに爆笑されそうだ。
ボーッとしながら口に運ぶ。…うん、やっぱ美味い。

「本当よく食べるよね、作り甲斐があるよ」

…なら一生食べるぞ俺は、とか言いたいのに口が回らない、あー…本当情けねぇ。

「ほら、薬」
「…粉薬嫌いだ」
「ワガママ言わない、それ受診の時言えば良かったでしょ?錠剤にすれば良いのに。…はい!これ一気に飲む!!」

そう言いながら笑顔でコップに入った水を渡されるので、薬を嫌々飲む。口に広がる苦味が嫌いなんだこれ。そんな事を考えていたせいであろう。
少しボーっとしていたらコップに手が当たり、コップの残り水を溢してしまう失態。

「っ!悪い!」
「いーって、私拭くから」

ティッシュに伸ばす手を軽く止められて、なまえさんがキッチンペーパーで拭いていく。

「…悪いな」
「ん?ちょうどここの床水拭きしたかったとこだし良いって」

無表情でサラッとそう流すなまえさん…俺の想い人は、多少カッコよくもあるみてぇだ。




「…なまえさん、一緒に寝よう」
「は?」

ポンポンと布団の隣を叩いて指定する。良いじゃないか今日くらい、…俺だって前の時付き合ったし。

キッチンから呆れたなまえさんが寝ている俺の横に座る。

「全く…じゃ、側に居るから寝なって」
「ああ」
「ん、おやすみ」

そう言い俺の頭を優しく撫でてくれるなまえさん。やっぱり時々は風邪ひくのもありだろう。なまえさんが俺の目を閉じさせようと瞼に手を置いてくる。

「なぁ…俺の事嫌いか?」

僅かに日中の明るさが差し込む手のひらの中、気になっている事を聞いた。

「…嫌いじゃない、から早く休んで良いよ」

大人らしい卑怯な答えだな、どうとでも捉えられるような…つーかなんでか泣きそう。その"嫌いじゃない"の言葉に続くのは"好きだよ"か"好きでもない"だな、あー…弱りすぎだろ俺。そんな自己嫌悪に陥りながら、眠りについた。






目を開けたらなまえさんが居なかった。
遠くでトイレを流す音がする。ドアを開けて入ってきたなまえさんが起きた俺に気付いて寄ってくる。

「どう?」

どうにもこうにも止まらなかった。額に手を当てようとするなまえさんの手をを引っ張り布団に引きずり込む。なまえさんの匂いがしてすげぇ落ち着く、あと抱き心地最高。

「ちょ、新開君!?」
「…なまえさん居なかったからな…」
「っトイレ!」
「言い訳だ。別に減らないし良いじゃないか」

暴れていたのも諦めたのか俺の腕の中で少し大人しくなったなまえさんに足ごと絡まる。太ももをすり合わせると気持ち良い、さりげなく腕で胸を触るとふにっとする…ああ、もう生で触りたい。そしてなまえさんのうなじにキスをする。

「〜っ!」
「減らないだろ、風邪のサービスだ」
「っ減る!そして風邪うつるからやめてよ!」

怒るなまえさんを無視して、そのまま具合悪さに任せて再度眠りについた。







目を覚ますと夕方だった。外から入り込む光がオレンジ色だ。腕の中のなまえさんもスヤスヤと寝ている。
あー、やばいなこれすげぇ幸せ。気持ち良さそうに寝ているなまえさんなんてまず見れない。睫毛は付けまつげしてねぇのにそれなりに長いし、肌も歳上のくせに綺麗だし…つーか、うまそうだし。生理的に硬くなっている身体の中心をなまえさんの柔らかい太ももに当てる。

「っつ」

ぅ…すげぇしたい、めちゃくちゃしてぇ。現在具合悪さよりもそっちの方が今辛いというバカな状況。

これで本当手を出したらマジで追い出されちまう。絶対なまえさん気持ち良い、じゃなくてもなまえさんだしな…訳わからないことを考えているぐらい限界なんだ俺。
頭じゃ飽きたらず、額に目元にと寝ているなまえさんにキスをする。〜っ本当好きだなまえさん!!何回もぎゅうぎゅうと抱き着いたり、キスしてアピールしていたらさすがになまえさんが目を覚ましそうなので渋々止める。

「…ん、良くなった?」
「まだ多少辛いけど昼よりはマシだ」
「そ、なら良かった」

なまえさんも寝起きで頭が回らないのか抱き着かれている事に対しての反応がない。

と思ったら、状況を把握したのか赤い顔して立ち上がる。…おめさん言っただろ、そのショーパンは下から見えるって。…ぁー、くそ…耐えられなくて布団に顔をうずめる。
何を思ったかそんな俺の頭を撫でてくる馬鹿ななまえさん。今日のなまえさんは甘くて嬉しいがそれ俺の今の状況には余計にくるだけだ。

「他、何して欲しい?」

俺を心配しながら覗き込んでくるなまえさん。
"して欲しい? "ってそりゃ色々に決まってるだろう。そんな一言も言えずに悶々しながら看病された1日だった。
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