0時


俺の○万円を容赦なく奪っていったなまえさん。その上3万も借りがあると言う、おめさんサバ読んでいないか?


この前迎えたバレンタイン。少し期待してみたが、何もなかった。オイオイ折角一緒に住んでいるんだから、多少あってもいいだろう。14日の夜にそう言ったら、なまえさんは鞄を漁って飴玉を一つ出して俺の掌に乗せた。まず足りるわけがない。








3月始めの今日もいつも通りに蹴られる様にして起こされる。見下ろすなまえさんからややウェーブかかった髪が垂れて揺れている。あー、今日は髪下ろして巻き髪での出勤か…珍しい。

「新開君、私今日遅いから。一応夕飯作っておいたから、電子レンジで温めて」
「おお、分かった」

はぁ…、俺もバイト行くか。適当な服を引っ掛け、アパートを出る。一応途中のハロ○に行き就職口を探してみる…っつってもねぇもんだよなぁ。しばらくはなまえさんのとこだな、やっぱり。

バイトに行きそれなりに働き、遅めの昼を頂く。そういやなまえさん遅いっつってたが、やはり男か?え、マジで?あの愛想がない人が?中々いい趣味だな男も。
他人の事をアレコレ考えるが結論は出なかった。

帰って、アパートから愛車をだして呑気に走り出す俺。やはり、こう走っている時が一番落ち着く。
気がつくともう19時。空腹とともにアパートの階段を愛車と共に部屋に戻る。

「ただいま…」

ってそうか、なまえさん今日遅い言ってたな。つい、癖で言葉を声に出してしまった。
冷蔵庫の中から朝作ってもらってあった夕飯を食べる。初っ端の日に食った大根と豚バラの炒め煮だ、味染みててうめぇ。

チラッと時計を見ると21時…遅いな。いや、でも食ってヤッてを考えるとまだまだか?下世話な事を考えながら、適当な番組をつけながら食後のデザートのチョコプリンを頂く。やはりデザートは別腹だ、同じ腹でもいけるけど。まぁ"なまえ"って書いてあるけど、後で補充しておけば良いな。


22時か…やっぱ遅いな。いやもう帰ってくるよな。愛想のない部屋の主が平日でここまで居ないというのも珍しい。
先、風呂入るか…。風呂を貯めてから、シャワーに打たれながら髪から身体全体を濡らしていく。頭を泡で洗っている最中に物音がした感じがした。
ガコッと風呂場の入り口を少し開け声を出す。

「なまえさーん?」

…が返事はないから、気の所為らしい。

風呂から出て服を着る。
部屋に出て行き携帯を開くがメールは単なるダイレクトメール1通だ。時計の針は、23時になりそうな事を告げている。明日も仕事だっつーのにお盛んじゃないか?
少し部屋を暗くする。コタツで暖を取りながら携帯をいじっていると徐々に液晶が霞んでくる。そして欠伸も出てくる…眠いな。
携帯の時間は23:14…なんとなくメール作成画面を開いて宛名を"なまえさん"にする。

"帰らねぇの?"…これじゃ靖友だ。
"遅くなると危ないぞ"…これじゃ寿一だし。"何をしているのかね?"って尽八。
いくつか文書を打つが消す。…なまえさんにメールなんて打ったこと少ないからなぁ。なんて送れば良いかわかんねぇ。でもまじで遅くないか?
手元の携帯で、送る文章が決まらずとりあえず
"チョコプリン美味しかった"
で送った。

15分後"死ね"という物騒なメールが返って来て思わず笑う。良かった、変な事に巻き込まれてはいなそうだ。…ってなまえさんなんてどうでも良いんだった。いや、良くないな俺の腹が。



0時少し前、ガシャっというとの開く音と共にコタツから出て行く俺。

「おかえりなまえさん」

いつもよりヒールが高い靴を脱いでいるなまえさんがいた。

「ただいまって、え、起きてたの?」
「…いや、音で今起きたんだ」

少し驚くなまえさんに、ずっと起きていたとか言うのはなんとなく気まずい感じがした。

「そ、ごめん。ごはん食べた?」
「ああ、美味しかった。皿も洗っておいたぜ」

キリッと言ったら当たり前でしょと冷たい言葉が返ってくる。
ジャケットを脱ぎながら、手櫛で髪を整えながら自室に入った。…なんつーか、働く女性がオフになる瞬間は嫌いじゃないかもしれない。
なまえさんは寝間着をもって欠伸をしながら脱衣所に向かう、暗い俺の部屋を通って。

何となく落ち着き、布団に入り寝る体勢となる。シャーッというシャワーの音が聞こえる。この人何してきたんだろうか、デート?飲み会?って俺には関係ないか。

脱衣所からドライヤーの音が聞こえる。なまえさん髪長いから時間かかるんだよな。そういや意外と近くで見ると長い人特有の傷みはないんだよな、手入れ行き届いているというか。

手で欠伸を隠しながら、なまえさんが出てきた。そして水を飲んでいる。

「じゃ、おやすみ」
「ああ」

フカフカの寝間着をきたなまえさんは寝ている俺の前を通りすぎ部屋に篭ってしまった。ギッと鳴る、ベッドにでも乗ったのか。

「…なぁ…男のとこでも行っていたのか?」

引き戸越しについ気になっていたことを聞く。

「えー…あー、そんな感じ」

少し胸がキュウと締め付けられる。おめさん特に話す気ないだろとか適当に流してるだろとか言おうとしたが、何故か喉につかえて出てこなかった。

「…はは、物好きもいるもんだな」
「まーねー」

もう話しかけるなとばかりの気の抜けた返事が返ってきた。あ、くそ流されたな。もう俺の質問にも寝たのか返ってこなかった。
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