幼なじみ
"勉強を教えてくれないか?"
ある平日の夜に届いたメールを見て、思わず顔が綻ぶ。なんしろ送り主が隼人からなのだ。もちろん即座に了承する。
私と隼人は幼なじみなのだが、高校が離れてしまった。そしてやっと自分の気持ちを自覚してしまっていた。そんな気持ちも告げることなく3年となる。隼人はあいも変わらず福富君とロードで走っているようだし、レースを誘われて見に行くと隼人への声援に胸が痛んでいた。そして、私に甘いのか隼人は帰る度に私を呼び出し何かと連れ回す。
「で、ここは...」
所謂進学校と呼ばれるところにいるので、申し訳ないが箱学さんよりは多少お勉強が出来る。
珍しく私の部屋で勉強を甲斐甲斐しく教える。いつもは基本的に外に出掛けたりが多いのだ、それか隼人の部屋だ。
「そうか、さすがだな。分かりやすい」
「分かったからパワーバーを置きなって」
勉強しながらも中毒の様に食べる隼人を嗜める。が、勉強にはカロリーが必要だと返ってくる。
そして勉強の合間にロードについてと部活の出来事についてキラキラとした顔で話してくれるので思わず釣られて笑ってしまう。大人びてみえる隼人なのにこういう所は本当に同年代だ。
「なまえー、ここ座れって」
休憩がてらに足の間をポンポンと叩いて指定されるので素直にそこに座る。すると後ろから軽く抱き締めてくる隼人。そしてテレビを見ながら私の手を弄ったり髪を手ですいたりしている。
そう隼人はスキンシップが昔から多いのだ、高校になってからは特にだ。しかし徐々に厚くなっていく胸板と逞しい腕にこうされるのは正直嬉しいのでついいつも身を預けてしまう。
ただこれ他の人にもするのかと思うと正直嫉妬する。
「隼人...他の人にもこうしてたら誤解しちゃうんじゃない?」
そんな考えが思わず声に出してしまった。
「なまえにしかしてねぇぞ?」
「え?」
「は?」
少し抜けた声に、思わず聞き返した。
「...俺ほぼ付き合っているもんだと思ってたんだけど」
「はひ?」
何かおかしいのか?的な顔をして衝撃的な一言を言う隼人に固まる私。
「寧ろなまえは、なんでこうさせてたんだ?」
ぎゅうっと抱き締められて、耳を舐められる。くすぐったくて少し身体を引くように反応する。え、これも普通だと思っていたんだけど。
「ぇ、普通のスキンシップじゃないの?」
「...なまえは誰とでもこうするのか?...なんだ、妬けるな」
少し後ろを向かされて頬にキスをされる。
「ん、違う.......あの、は、隼人だから?」
恐る恐る言う私。
「奇遇だな、俺もなまえにしかしないぞ」
「...」
上から降ってくる言葉に何かが解けていくようだ。
「あの...私の位置付けって隼人の対象外だと思ってたんだけど」
隼人の私をなぞる手はいつも通り止まらない。
「まぁ中学までは...学校離れて分かったからな。だからこうして、毎週のように会って繋ぎ止めておきたかったんだ。嫌だったか?」
そう隼人の質問は大体いつもズルいのだ。核心はぼやかすくせに、人の心を揺さぶってくる。大体そんな口車に乗せられて口を開いてしまう。隼人の足の間でクルッと後ろを向く。
「嫌な訳ない、...ぅ、もっとしてほしいと思ってた」
顔見て正直に気持ちを言うのは初めてだ、でも伝わってほしい。顔に熱が集中してくる。
「〜っ...そうだな、おめさんのその顔みれるならもっと早く言うべきだったな」
少し目線を外す隼人。そんな隼人なんて見たことなく、見慣れていたはずの顔にバクバクと心臓が高鳴る。
「なぁ、ここにもキスしたいんだけど」
しっかりとした指で唇をなぞられる。
「...隼人の気持ちしっかりと聞いてないよ?」
「...やっぱり言わなきゃだめか」
母性を擽られる顔で困る隼人だが、私だって聞きたい。言葉にだって酔わせてほしいのだ。
すると私を少しひきよせ、少し抱き締める隼人。そして耳元で囁かれる。
「まぁ、今更すぎるけど、...なまえのことが好きなんだ」
今までの全てを溶かすような言葉に酔いたくなる。でも
「っ、ダメ隼人。顔見ていって欲しい」
抱きしめる力が強くなる。
「うーん...顔見ないとダメか?言ったじゃないか」
「えー、顔見たい」
隼人の胸元の服を引っ張るあざとい私だ。
「おめさん、昔からそうなると頑固だもんなぁ」
困ったように髪をかきあげる隼人、向かい合っているそんな隼人に触れたくて頬をなぞり、青めのメッシュの入った髪を撫でる。
気持ちなんてお互いわかっているのに、なぜ言えないのだろうか隼人も私も。そして気付いてないでしょ?私も好きだとはまだ言ってない事を。ズルくてごめんね、でも隼人から聞きたい女心だ。
私の肩に手をやり、身体を離すようにする隼人。あ、ついに言ってくれるのか。と思いきや大きな手で視界を遮られ視界が暗くなる。
「隼人?見えないんだけど、これで言ったらダメだよ?」
「やっぱりか...」
尻込む隼人が可愛く見えてきた。
ようやく手を外してジッと私を見つめてくる隼人に今度は私が恥ずかしくなる。
「なまえ、目を逸らすなよ」
「ん、だって」
隼人が私の頬にそっと手を添える。
「おめさんが顔見て言えっていったんだろ?」
隼人が笑いながらそう言いわたしの頬を軽くつねる。
「ぅー、ごめんなひゃい」
「柔らかいな餅みてぇ、うまそうだ」
「ん、食べないでください」
こうして段々隼人のペースになる。
「で、話は戻すよ?」
「おっ忘れてないのか?」
バキュンと指で撃ってくる隼人。
「そうやって、ぼかさな〜いの」
真似してバキュンと返す私。
「バレたか。......まぁそうだな」
何となく座り直す隼人に釣られて私も姿勢を少し正す。
そして垂れ目なのに眼光するどい目が私を見つめてくる。
「なまえ、おめさんしかダメなんだ..か、彼女になってくれないか?」
少し照れて目線が泳ぐ珍しい隼人だ。
「フフ、隼人でも照れるんだね」
「あー、もう本当に勘弁してくれ。こんなこと俺言わないだろ?」
私の肩に顔をポスンと埋めてくる。明るめの髪が頬をなでる。
「可愛かったんだもん。...あの、隼人こちらこそよろしくお願いします」
「あぁよろしくな」
肩から顔を上げた隼人が私の顔に手を添える。と思ったらさっきのように大きな手で私の視界を遮ってきた。
「ん?隼人?」
少し戸惑う私の唇に軽く何かを押し付けられる。それに気付くのは簡単だった。やたら柔らかくて気持ちがいい。
離れると同時に視界も開ける。本当にズルい男だ。
「初めてだよ?」
「奇遇だな、俺もだ」
「え、そうなの?」
再度キスをしてくる隼人。
「気持ちよかったからまたしちまった。これで2回目だな」
「ば、馬鹿...」
「なんしろおめさんの事大切すぎて、手ぇ出せなかったんだ」
未だ頬に手を添えながらさらに口説いてくれる隼人に思わず照れる。
「つーことで3回目」
チュッと音を立てて唇を奪われる。
「〜っ隼人!遊ばないの!」
「俺はいつでも本気だぜ?」
自信たっぷりの笑顔で見つめてくる隼人にたじろぐ。
「...よし、来週えっちな事しよう」
「っ!え、な、な何!?」
「だからえっ「2度言わなくていいから!」
爽やかに言い出す隼人に思わず突っ込む。するとギュゥっと抱き締めてくる隼人。
「俺、これでもかなり我慢してるんだ。本当ならこのまま押し倒したい」
「ぅ...それは」
心の準備的なのが整わない。
「だろ?それも何年も前からだからな」
「う、分かってる!」
そりゃ正常な男子高生だもんね。何かしら私には理解できないこともあるのであろう。
「...はぁ、分かった、空けておくね」
「っ!俺頑張るわ」
「頑張らないで良いからぁ!!」
真剣な表情で変な事を言いだす隼人に思わず返答する。えっちな事ってそう、いうこと?だよね。隼人とするの?...心臓が持たないかもしれない。
それから静かに抱き締めたまま何度も頭を撫でたり、髪をすいたりしてくる。前から思っていたけど気持ちいいし、安心する。今日はまた特に気持ちを我慢しなくて良いから余計に気持ちがいい。
「とりあえず、今日指入れて味見していいか?」
「...」
やっぱり安心してはいけないようだ。
(新開と幼なじみ.甘めの話 10000hitリク)
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