感謝


「あ、あのですね…!!」

何かを思い立って言い出す様子の小野田君。部活終わりで片付けをしていたら呼び止められのだ。タオルで汗を拭き終わっている筈なのになぜか汗が浮かんでいる。
「…何かな?」
「う…その、今日3月7日じゃないですか…!?」
手をぎゅっとと握り、目を瞑りながら冷や汗かきながら話し出す彼に耳を傾ける。

「…みょうじさん…今日小野田、「ま、ま、待って今泉君!僕が言うから!」
周りで様子を見ていたらしい今泉君が喋ろうとしたのだが、キリッとした小野田君が今泉君を手でセーブした。
「きょ、きょきょ、今日の天気!!良いですよね!?」
「…え、あ?曇りだけど…」
思わず事実を滑らしてしまった私の口。しまった…と思ったけど遅かった。ショックを受けてしまった様で肩を落とす小野田君に対して今泉君が肩を叩いている。そんな今泉君に対して先に部室帰っててと言って帰らせている。

そう、きょう特別な日なのだ。それに気づいていながら、このアタフタする姿を楽しむのは少し意地悪かもしれない。

「ねぇ、いつも小野田君には"感謝"してるよ」
「へ?」
唐突な私の感謝の言葉にポカンとする小野田君に近づく。
「最後の最後まで山の頂上を目指してくれた事」
「あ、いや、それは何度も言いますように…あの、皆さんの力添えがあっての…」
何度も聞いた様な台詞を今も聞く。
「…あと鳴子君と今泉君の間で緩衝材になってくれてたりするとこ」
「そ、そんな!鳴子君も今泉君も良い人で!優しくて…その…!」
しどろもどろになりながらも、身振り手振りで必死に自分を下げる言い方小野田君に思わずクスッと笑ってしまう。

「あ、忘れてた…今日がなんなんだっけ?」
「その僕、今日誕生日なんです!その、あの、だからみょうじさんに祝って欲しくて…!」
真っ赤になりながらたどたどしく言う姿に胸が温かくなる。ああ、もうどうしてこうも小野田君は私の心を掴むのだろうか。

「…3月7日の誕生花はカンパニュラっていう花なんだよ?花言葉は"感謝"…知ってた?」
「え、あ!そ、そうなんですか!?」
しっかりと誕生日を知っていた私の台詞に戸惑う小野田君。

…ああ、もういいよ。照れ臭くていつもは言えない言葉だけれど、今日という特別な日なら言っても良いかもしれないね。誕生日という日は、誕生日という名目に紛れて自分の気持ちを入れて言葉にする日だ。

「っ誕生日おめでとう、坂道君に会えて良かったよ」
私が先輩だから少しはお姉さんぶって言おうとしたのに、出た声は小野田君にしか伝わらない声量でしか声が出なかった。
「ぅ、嬉しいです!!!」
「そんな訳で"感謝"と共にプレゼントっ!」
小野田君は目をぎゅっと閉じているのでここぞとばかりにその真っ赤な頬にキスをした。お願い、ちょっとは先輩気取らせてほしいの。












坂道君ハッピーバースデー!!!!!


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