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着々進む文化祭準備。
箱根学園の文化祭では、生徒全員簡単なブレスレットを作る。文化祭中では法被やらクラスTシャツやらで必ずしも制服でないからだ。外部の人との簡単な識別用である。まぁここまでは同意する。
ただ問題といえばいいのか分からないが問題がある。男子が青色、女子が赤色の紐を使っていることだ。要は気になる人がいたら交換しちゃいなYO!と言うことだ。何この恋愛イベント。私としてはこちらの目的が主なんではないかと疑っているところだ。私はもちろん去年は赤色のブレスレットのまま文化祭は終わった。付き合っている方々は大多数文化祭初日から交換している。
文化祭を数日後に迫った日のホームルームでブレスレットの材料と作り方が配られた。誰でも簡単に出来るように生徒会の人がネットで探してくるのかそれなりにセンスあるものだ。
今年のデザインはリングをアクセントで使う様だ。本当に簡単だったので係の人が説明している間に進めて5分くらいで作ることが出来た。
「よく分からないから作ってくれないか」
申し訳なさそうに眉を下げた新開が言ってきた。そんなやや困り顏な新開に思わず良いよというのを堪えた。
「新開、教えるから自分で作りなって」
欲しがる女子も居るだろう。説明用紙を開きながら、ココを通して、結んでと口と手を出して作らせる。新開の大きな手の中で青い紐が結ばれていく。
「おお!こうか!」
「そー、これで女子が喜ぶんじゃない」
「ん?なんでだ?」
え、知らないのか新開。教えてあげた方がいいもんなのかな。知らないっていうのも交換したがる女子が可哀想なのでとりあえず教えておいてあげた。
「そうなのか、よしみょうじ後夜祭までに交換してなかったら交換してくれ」
「え、なんでよ?」
「なんだか淋しいだろ」
確かによく分かるよ、去年そうだったから。でも新開は恐らく女の子が群がると思うがとりあえず了承しておいた。
放課後私はある人にお願いがあって別の棟に行こうとした。しかし教室を出ようとして、教卓の前を通った所で担任に呼び止められた。素直に止まって反射的に出る笑顔で話を聞いたら、先生はすぐ寄るところがあるのでノートを職員室へ運んで欲しいとのことだ。え、なんで私?一瞬周りをチラッと見たが部活へいそいそ行く感じの人が多いので諦めて運ぶことにした。
クラスほぼ全員のであろうノートの山。あーこれ15kg以上あるわ、2回に分けるとか面倒なので無理矢理にでも1回で済ませたい。肩には自分のカバン、その上両手でノートを持つがいかんせん足元が見えない。こんな時に限ってミサキが早退している。フラフラになりながら階段を降りて行く。やっばいこれ2回に分けた方が早かったかもしれない、後悔しながら降りて行く。するといきなりノートを取られ軽くなった。そのため一瞬フラついてしまったが、ガシッと手で肩を支えられた。
あ、この人って
「あ...フクチャン?」
「む、職員室までか?手伝うか?」
初フクチャンだー!と感激してたら、さらにフクチャンは出来た男だった。
「じゃぁ、お言葉に甘えて半分お願いします」
半分と言ったのにサラッと3分の2を持ってくれるフクチャンに思わずときめいた。
荒北に言わせると鉄仮面だが、聞くより話しやすいし表情も豊かだと感じる。フクチャンには、簡単な自己紹介と一応荒北の幼馴染で話を聞いていることでつい"フクチャン"って呼んじゃってゴメンねと謝ったら穏やかな笑顔で"構わない"と言われた。とりあえずお許しを得られたようだ。
職員室前まで来て私はフクチャンからノートを貰った。
「ありがとう、助かっちゃった」
「構わない、また何かあったら言え」
また穏やかな笑顔を見せてくれたと思ったら、私の頭を手でポンポンと撫でて去って行った。あ、労われたのか?
フクチャンにされると何かご利益ありそうだ。フクチャンってお父さんに欲しい感じだよなぁ、アホな事を考えながら、荒北が寄りつくのも理解出来た気がした。
しまった、寄り道をしてしまった。約束の時間から過ぎてしまう。ある棟に向かった。
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