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もう外は暗くなっていてた。星が自宅よりも多くて澄んだ夜空が綺麗だ。体育館の中で当てられていた熱気がスーッと一気に冷まされていく感じがする。
久しぶりに人の前でロンダードからのバク転を行なった。身体の疲労と緊張が解けたのとクラスの皆への説明でどっと疲れた。
あれだけやっといて言うのもアレだが、正直言って目立つのは好きじゃない、影で尽力つくしたい派だ。今回は少し慣れないことをしてしまった。反省をしながら目立たないベンチを探して腰掛ける。それだけじゃ足りなくてベンチに仰向けになってタオルを顔に乗せて休むことにした。
2〜3分すると上から声が降ってきた。
「中々良かったんじゃナァイ?」
「...荒北か」
タオルを取って、荒北を見る。私が寝ているせいで見下ろす荒北が月を背負っていてなんだか綺麗だ。そんな荒北が私が寝ている頭側にドカンと音を立てながら座った。
「...これで優勝できるかな、食券欲しいんだよね」
「あめーヨ、ボケなすがァ」
「えー、結構派手にやったつもりだったんだけどなぁ」
あー本当夜空が綺麗だ。横になって見ると余計プラネタリウムの様だ。
「...荒北ぁ、この前の続きなんだけどさ、新体操は今でも好きだよ。でも私なりに決着つけてあるから心配しないでいいよ」
「ハッ、...分かってんヨ なまえチャン」
「あら、そーですか」
そう意外とお節介な荒北の事だ、少し似た様な私を心配してくれていたのは薄々感じていた。今回のステージで少しは伝わったのなら嬉しい。
なんか変なテンションなのと緊張が解けたことやら部活の思いや荒北の事とか合わさったせいか、ブワッと涙として溢れてきてしまった。そうか、高校に入って新体操が好きだとか初めて口に出した。あぁは言ったけど、なんだかんだでずっと胸に引っかかっていたんだな。
外の風は涼しくて、ツーっと耳の方へ流れた涙が冷たく感じた。慌ててタオルで拭こうとしたら、それより先に荒北の指で擦られた。
「...この泣き虫がァ」
「うるさいぃ」
今日はやたら優しい荒北だ、さすがに恥ずかしくなってタオルで顔を覆い隠す。荒北は私のおでこに青いブレスレットをした手を乗せたまま、無言の空間が続いた。あぁ、荒北もブレスレット着用するんだなぁ。
数分続いた静かな空間に最初は良かったが、なんだか気恥ずかしくなってきた。
「あ、荒北体育館戻りなよ」
「ヘイヘイ、せーぜー目ェ腫らすなヨ」
「あーもう泣いてないですっ」
荒北はおでこから手を離して、体育館に戻って行った。おでこがスースーする。
まだ潤む目をタオルを当てながら考える。
これで荒北と仲直り出来たのだろうか、いや喧嘩してたわけじゃないけどさ。正直あいついい奴だから、嫌われたり幻滅されたりするのは嫌だ。
はぁ、あんまり長く休憩するのも変だからそろそろ戻るかなぁ。でも熱がすっかり冷めてしまったので動く気になれない。
のそのそと重い腰を上げて体育館の中へ入り、何食わぬ顔して友人達のいる辺に合流する。皆ステージに夢中なのとテンション高いままだから全く気にしていない様だ。
体育館の端にいた新開にステージ状況を確認する。するとあと3年の数クラスで終わりだそうだ。あ、結構休んでいたのか自分。
周りが騒がしいので耳元で新開が聞いてきた。
「おめさん泣いたのか?」
「え!?なんで!?」
もうバレた。
「ん?目が少し腫れているぞ」
なんだ、荒北とのやり取りが見られてたわけじゃなかったか良かった。そして、ステージのライトが意外と明るくてバレてしまったのか。
「あ、えと、ちょっと感極まっちゃって」
顔付近に手を持っていき隠すようにして、しどろもどろに答える私。ってどんだけ感受性豊かだっていうのよ、自分で言いながら内心ツッコミを入れる。新開がさらに耳元に口を寄せてきた
「そうか、おめさんなんだか余計にエロいな」
「ゃっ」
薄いTシャツの上から脇腹あたりを硬い手で撫でながら耳元で吐息交じりに言われた想定外の言葉。脇腹と耳元からゾクッとした感覚が身体中を駆け巡って、腰砕けてガクッと膝ついてしゃがんでしまった。ちょ、何このフェロモンダダ漏れのセクハラ男!?腰砕けるなんて不覚すぎる。しゃがんでもなお耳付近を這う手を叩いた。
「〜んっ!何なの新開っ!?」
恥ずかしさから涙目になりながら反論する。
「あぁ耳弱いのか?みょうじがそんな表情してくるからいけない、ほらそう赤くなるとさらにだぞ」
初めて見るギラついた様な新開に怯む。
「あーもう、本当うるさい新開っ」
両手で耳を塞ぐ、こんなの誰だって真っ赤になるわボケ!耳弱いのなんて今知ったとこだ、あぁ本当消えてなくなりたいんですけど!してやったりに意地悪く笑うこいつマジで殴りたい。
体育館まだ暗くて良かった。皆ステージに夢中で本当良かった!
視界の隅にミサキ達を見つけたので新開放ったらかして駆け寄って抱きついた。本当泣きたい。どうしたの?と聞かれたので、鬼に捕まってたと言ったけど伝わらなかった。
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